ドラマ・クロカイブ

AllAboutドラマガイドが書ききれなかったことをつづります。

劇中劇ドラマは視聴率が取れない?『おちょやん』『コントが始まる』

視聴率としてはもう一つだったものの、終盤盛り上がった『おちょやん』。
最初から懸念されていた「浮気されて離婚するエピソードをどう描くのか」ということに真正面から取り組み、テーマとして昇華した展開が見事でした。

最終回の劇中劇「お家はんと直どん」も初演よりも味わい深い、と感心しながら見ていて、ふと気がついた。そうか、劇中劇ジンクスにはまったのか。

ジンクスとは「劇中劇を多用する連ドラは名作になってもヒットしない」です。

始まりは1983年、西田敏行主演の『淋しいのはお前だけじゃない』から。

借金債務者を集めた大衆演劇劇団を舞台に、毎週演じられる大衆演劇の演目と登場人物たちの人生がリンクする構成。かなりおもしろかったけど、当時は大人気だったTBS金曜ドラマの中で低視聴率に沈みました。

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この流れを受け継いでいるのが落語が題材の『タイガー&ドラゴン』と『ちりとてちん』。どちらも評価は高いが視聴率としてはそれほど、という作品でした。二重構造の複雑さが、好きな人は好きだけど、一般的にはむずかしいという印象をもたれるんでしょう。

そして、今年に入って、この劇中劇型ドラマが『おちょやん』を含めて、なぜか多い。まず『タイガー&ドラゴン』と同じ宮藤官九郎脚本の『俺の家の話』。ホームドラマと能に加えてプロレスまでぶちこんで、ちゃんとテーマ的にまとまっているのがさすがクドカン


バックステージもので『バイプレイヤーズ名脇役の森の100日間』と『書けない!?』。
そして現在放送中では『コントが始まる』毎回、冒頭に菅田将暉、仲野大河、神木隆之介演じるトリオ「マクベス」によるコントがあり、本編でコントに隠された意味がわかるという構成。『きれいのくに』もかなりギョっとする劇中劇の使い方をしています。

 

なぜ、こんなに多いのか。緊急事態宣言でエンタメが「不要不急」だといわれているのに対して、エンタメと人生のつながりを描き、必要なんだと主張するためでしょう。

 

劇中劇が多いドラマでヒット作を考えると『ガラスの仮面』。原作コミックがすでに名作なので、それをいかに3次元化するかというのがポイント。当時16~17歳の安達祐実というベストなキャスティングに野際陽子月影先生佐戸井けん太の演出家・小野寺など原作によりそえたのが勝因でした。


はなし変わって『おちょやん』終盤の重要人物、花菱アチャコがモデルの花車当郎(塚地武雅)。劇中で「あたろう」と聞くたびに頭の中で「ア太郎」と変換されて、「モーレツかよ」とツッコミを入れてしまいます。

もーれつア太郎赤塚不二夫のヒット作ですが、『おそ松くん』『天才バカボン』は近年リメイクされて人気なのに対して、『もーれつア太郎』は世代が限られてくるでしょうか。

もしかしたら実際、当郎という人がいて、花車当郎もア太郎も元は一緒なのか?と思ったので調べてみました。

すると当郎はいました。和老亭当郎、『おちょやん』の須賀廼家万太郎(板尾創路)のモデル、曾我廼家十郎のペンネームでした。ただし読みが「あたろう」ではなく「とうろう」。花車当郎の役名元ネタなのは間違いないでしょう。

もーれつア太郎』の方はウィキペディアによると「漫画が当たってほしいという願いをこめて」と書いてあります。赤塚不二夫満州生まれで戦後引き揚げて東京、という経歴などから見て、曾我廼家十郎との接点はなさそう。

ということで、共通するのは「当たろう」という願いとダジャレのようです。