最近多い神戸・阪神間ドラマ『わたしの一番最悪なともだち』
NHKよるドラ枠、8月21日から始まった『わたしの一番最悪なともだち』楽しみに見てます。
没個性のため就活に苦戦する笠松ほたる(蒔田彩珠)が理想の自分をイメージしてみると、それは苦手な幼なじみ・鍵屋美晴(高石あかり)だった。エントリーシートに美晴のことを書いて提出すると、順調に選考をクリアし……と、ちょっとひねった自分探しドラマです。
蒔田彩珠らしい屈折した陰キャが魅力ですが、『おかえりモネ』でもそこが苦手という人もいたし、好みがわかれそうな作品ではあります。高石あかりは4〜6月放送のMBSドラマ特区『墜落JKと廃人教師』に続いて好演、今後の活躍にも期待。
また、なかなか映画やテレビでヒット作がでない就活もの(切実すぎるんでしょうか)としてもよくできています。脚本の兵頭るりはNHKで2020〜21年に『就活生日記』という1話5分のミニドラマシリーズを経験ずみ。
舞台は神戸、学校ロケ地が神戸大学、神戸高校、神戸松蔭女子学院大学などで灘区の阪急六甲駅あたりが中心。ドラマを見ててもわかる坂のきついところで、円形校舎が印象的な小学校時代のロケ地・美野丘小学校は『秘密のケンミンSHOW』の「神戸坂事情」特集にも取り上げられたぐらい。
『私の一番最悪なともだち』を見ながら思い出すのは、去年から今年にかけて神戸から阪神間あたりを舞台にしたNHKドラマが多く、みんなおもしろかったこと。大阪と神戸の間の「阪神間」、いろいろ定義はありますが、ここでは兵庫県庁的にいう南阪神地域、具体的には尼崎・西宮・芦屋の三市。阪神本線、JR神戸線、阪急神戸線が並行して通り、大阪湾に面しているところです。
ドラマとしては、最初が2022年6〜8月、BSプレミアムのプレミアムドラマ枠で放送の『拾われた男』(同年10〜12月にNHK総合ドラマ10枠でも放送)。俳優・松尾諭が原作兼モデルで、生まれ育ったのが阪神本線の南側、尼崎と西宮の間を流れる武庫川の両岸あたり。
つづいて2022年8〜9月、『私の一番最悪なともだち』の一年前のよるドラ『あなたのブツが、ここに』で尼崎が舞台。
今年に入って5〜7月、プレミアムドラマ枠で『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』。原作でモデルの岸田奈美のプロフィールからすると、生まれ育ったのが神戸市北区の西宮と隣接しているあたりで、大学は関西学院大学なので西宮。
なぜ、いま神戸・阪神間なのか。『拾われた男』と『家族だから愛したんじゃなくて』はおもしろい原作を探して、たまたまといえなくはないですが、『あなたのブツ』と『私の一番最悪』はオリジナル作品です。
一つ考えられるのは2020年放送、NHK大阪制作の土曜ドラマ『心の傷を癒やすということ』のインパクトではないかと。柄本佑演じる神戸大学病院勤務の精神科医が被災者に寄り添うことにより、治療じゃなく治癒力を回復させる姿を描き、ギャラクシー賞奨励賞、放送文化基金賞など受賞し高く評価されています。
柄本佑は来年の大河『光る君へ』で男性登場人物一番手の藤原道長を演じますが、『心の傷を』及び同時期の連ドラ、『光る君へ』と同じ大石静脚本、吉高由里子主演『知らなくていいコト』でのヒロイン相手役が藤原道長につながったような。
また『心の傷を』脚本の桑原亮子はこの後、朝ドラ『舞いあがれ!』を書いているなど、次の重要な作品につながっています。
というようなことを書いていると、10月からのテレビ朝日系日曜よる10時のABC制作枠、堀田真由・萩原利久主演『たとえあなたを忘れても』が神戸舞台で制作されるというニュースが。
ABC大阪朝日放送は2021年10〜12月放送、北村有起哉主演の『ムショぼけ』で、NHKの4作に先んじて尼崎を舞台にしています。阪神尼崎駅前のシャッター通り商店街の風景が印象的でした。
それから2024年秋からのNHK大阪制作の朝ドラ、橋本環奈主演の『おむすび』も舞台は福岡県糸島から神戸・大阪だと発表されています。
神戸・阪神間ドラマのムーブメント、まだ続きそうです。
太平洋戦争中に始まりながら暗くならなかった『本日も晴天なり』
BSプレミアム/BS4K 8時15分〜30分、過去の朝ドラ再放送枠で『本日も晴天なり』が終わりました。朝ドラの中では地味目な作品なのになぜ今、再放送するんだろう、渡辺裕之に先立たれた原日出子を励ます会なのか?と始まる前は疑問でした。
しかし見ているうちにわかった。戦時下にNHKに女子アナとして採用されたヒロイン、戦後早々に退職したものの、同期は残っていることなどにより戦後の放送史も描いて、NHK的に重要で「テレビ70年」にあわせて投入してきたんだと。
放送史的に重要、はNHK視点ですが、視聴者側から見ての『本日も晴天なり』。朝ドラの中で特筆すべきなのは「太平洋戦争の真っ只中から始まりながら暗くならなかった」ということ。
どうしても苦難の時代になる太平洋戦争。扱う朝ドラの多くは、最初は戦前で勢いをつけてから突入し、そうでなければ1945年の終戦間際からスタートします。
1975年の半年放送になって以降に制作された作品で、終戦の年以外の太平洋戦争中(1941〜1944年)に始まったのは『本日も晴天なり』(1944年スタート)以外は『春よ、来い』(1943年スタート)のみ。いろいろと問題の多かった『春よ、来い』ですが、戦時中スタートというのも盛り上がらなかった要因だと思います。
なぜ『本日も晴天なり』が暗くならなかったのか。タイトルが「晴天」だから、というのはベタ回答。やはり小山内美江子の筆力でしょうか。同じく脚本を担当した『マー姉ちゃん』も、太平洋戦争を最も明るく乗り越えた朝ドラだと思います。熊谷真実・田中裕子・藤田弓子の超強力母娘トリオの活躍ということはもちろんですが、2つ続くとスタッフの力量も認めないと。
小山内美江子、『マー姉ちゃん』以前はそこまで脚本家として目立った存在ではありませんでした。しかし『マー姉ちゃん』(1979年4月~9月)が終わるとすぐに『金八先生』第1シリーズ(1979年10月~1980年3月)で連続ヒット。ここから『金八先生』第2シリーズ(1980年10月~3月)。半年おいて『本日も晴天なり』(1981年10月~1982年4月)、そして1983年は大河ドラマ『徳川家康』。この合間には長男の利重剛がメインの『父母の誤算』『親と子の誤算』など書きまくっています。
さて、ここで問題です。『本日も晴天なり』とほぼ並行して放送された名作ドラマは何でしょう?
10行改行します。
答えは『北の国から』最初のTVシリーズ。『本日も晴天なり』は1981年10月5日〜1982年4月3日、『北の国から』は1981年10月9日〜1982年3月26日。
『北の国から』は倉本聰の現代文明批判がテーマにありますが、『本日も晴天なり』もヒロインの夫(鹿賀丈史)が人間工学を応用した家具づくりを仕事にしたり、普通なら最終週に出版記念パーティーを開いて終わるのに(『花子とアン』とか、出版記念じゃないけど『ゲゲゲの女房』とか)第1次オイルショックにより延期になったところに共通したものを感じます。
そしてこの流れは1年後の『おしん』大ヒットにもつながるような。
知られてないけどおもしろいTBS月曜20時のミステリー連ドラ
BS-TBS平日17時台のドラマ再放送『浪花少年探偵団』(2012年7〜9月)、おもしろいので見返してます。TVerでも。
主演は前年に『デカワンコ』でコメディエンヌとしての才能を見せた多部未華子。
少年探偵団員はまえだまえだの前田航基・旺志郎兄弟に濱田龍臣、高橋晃(塚地武雅版『裸の大将放浪記』で山下清少年時代役)。
同級生の女の子は学級委員長が八木優希、コメディ担当が二宮星の前年度朝ドラ『おひさま』『カーネーション』のヒロイン少女時代役コンビに、東宝シンデレラ入賞でデビューした浜辺美波がマドンナ役と興味深いメンバーがそろってます。
放送されたのはTBS月曜20時のパナソニックスポンサー枠。『水戸黄門』末期には佐々木蔵之介主演の『ハンチョウ』シリーズと交互放送でしたが、2011年に『水戸黄門』終了ですべてミステリーの枠に。『浪花少年探偵団』が東野圭吾原作など、人気ミステリー作家原作でいいドラマが多かった。しかし20時台で視聴率も高くなく、『水戸黄門』終了後、3年ちょっとしか続かなかったので、あまり知られていないのが惜しい。ここで紹介しておきます。
『確証〜警視庁捜査3課』(2013年4〜6月)
今野敏原作。
刑事ドラマでは殺人・強盗事件が担当の捜査1課が花形で、詐欺横領の2課、窃盗の3課、暴力団の4課などはあまりメインにはなりません。
ベテラン刑事(高橋克実)と所轄から3課に配属された若手女性刑事(榮倉奈々)のバディもの。金庫破り、空き巣、スリ、自動車盗難など実例盛りだくさんで、おもしろくてためになります。
同じような趣向では、2018年日本テレビの『ドロ刑-警視庁捜査三課-』がありました。三課のダメ刑事(中島健人)が謎の男(遠藤憲一)のアドバイスで活躍するが、謎の男の正体は伝説の大泥棒だったというもの。これも、そこそこ面白かったと思うのですが、やはり地味なのか視聴率は伸びず。
『名もなき毒』(2013年7〜9月)『ペテロの葬列』(2014年7〜9月)
宮部みゆきの杉村三郎シリーズが原作。
児童書の編集者だった杉村三郎(小泉孝太郎)は結婚相手の菜穂子(国仲涼子)が大企業グループ会長(平幹二朗)の愛人の娘だったことからそのグループ会社の広報誌編集者になり、その企業がらみの事件にかかわることに。
テーマは第一作タイトルにもある、人の持つ毒。特に『ペテロの葬列』で、左遷されて広報誌編集部にやってきた井出が振りまく悪意が印象的。演じた千葉哲也、演出家としても評価されている舞台メインの俳優で、いつかブレイクするだろうと思ってます。
個人的に塚原あゆ子演出が気になり出したのも、『名もなき毒』及び、同じ年の『夜行観覧車』を見てから。小泉孝太郎が親の七光りを脱してちゃんとした俳優になったな、というのもこのあたりだと思います。
『ペテロの葬列』の最後で離婚して広報誌編集部も辞めて、シリーズ終了。ただ原作が尽きたという面もありました。その後、杉村が本業の探偵になった後の中短編集が二冊出版されているので、ドラマの続編も見たいところ。
『隠蔽捜査』(2014年1〜3月)
こちらも今野敏原作。
警察庁のキャリア竜崎伸也(杉本哲太)は謹厳実直な性格のため、息子の犯罪をもみ消さず、所轄の署長に左遷される。それでも警察官としての原理原則を外すことなく、幼馴染の伊丹刑事部長(古田新太)と協力し捜査を陣頭指揮。警察不祥事を隠蔽する動きに立ち向かいます。
内容も面白いけど、見ものは『あまちゃん』(2013年4〜9月)直後だからできた杉本哲太・古田新太のダブル主演。他にもライバルは生瀬勝久、現場で活躍する刑事は安田顕など、おっさん率がめちゃ高い。枯れ専に特におすすめ。
戸田恵梨香、まぼろしの朝ドラは何か
フジ系日曜朝『ボクらの時代』、11月13日放送は戸田恵梨香x永野芽郁x高畑淳子の映画『母性』宣伝回。
この中で戸田恵梨香、オファーだった『スカーレット』以外にも、朝ドラのオーディションを受けて「実質受かったんです…けど、当時、16,7(歳)とかだったと思うんですけど、40歳すぎまで演じないといけないって言われて“私、できません!”って(断った)」とすごいことをいいだしました。
戸田恵梨香は1988年生まれ、2000年に『オードリー』で子役として朝ドラデビュー。中学卒業後に上京して本格的に女優業を開始し、ブレイクしたのは2006年の映画『デスノート』で、翌2007年には『ライアーゲーム』で連ドラ主演。ここまで売れると当時の朝ドラだと普通、ヒロインを目指さなくなります。
ヒロイン決定から放送開始までだいたい一年ぐらいの期間があることを考えると、2004〜2007年に放送された朝ドラに絞り込めます。2006年の『純情きらり』と『芋たこなんきん』はオーディションがなかったので除きます。
鍵になるのは「40歳すぎまで演じないといけない」なんですが、この時期、その条件を満たす作品は存在しません。一番、高い年齢まで演じるのは『ちりとてちん』。1973年大晦日生まれで放送当時リアルタイムの2007年春まで描いたので33歳。
他は『天花』『わかば』『ファイト』『風のハルカ』『どんど晴れ』とみんな20代後半止まり。
ということで、一番可能性があるのは『ちりとてちん』。年齢要件の違いは、途中で設定が変更になったか、戸田恵梨香が30代と40代を記憶違いしているのか、はたまたボヤかすためにあえて間違えたのか。
あくまで推理で、断言はできませんけどね。
タイトルコールのように出てくる『ちむどんどん』に対して劇中に出てきたことはあったっけ『ちゅらさん』
『ちむどんどん』に対する問題点指摘の中で、なるほど、と感心したのは、「ちむどんどんする!」などとタイトルコールのようにヒロインがやたらと叫んだ朝ドラは他にない、というものでした。
確かになさそう。これまでヒロインがタイトルを言っていたのを思い出すと『ごちそうさん』か『だんだん』(ありがとうの意)が多そう。『おはようさん』もだけど、映像がほとんど残ってないのでどれだけ多いか確認できません。この挨拶・感謝系は多くても、日常会話の中でさりげなく出てくるので『ちむどんどん』のようには目立ちません。
『ちむどんどん』をヒロインの目標と捉えると、『ほんまもん』も「ほんまもんの料理をつくる」「ほんまもんの料理人になる」とそこそこ使われていました。『甘辛しゃん』も酒造りの目標として同様。味覚系は全体に多いけど『ちむどんどん』ほどではありません。
なぜ、他は少ないのか。一番最初に考えられる理由は、朝ドラのタイトルはヒロインの名前、愛称が使われることが多いから。「一人称が自分の名前」系女子がヒロインにならない限り、自分でやたらと言うことはないでしょう。
ここで「ホントに名前・愛称タイトルが多いのか」について検証してみました。今のところタイトルが確定している109作目『ブギウギ』まででカウントしてます。
まず「名前そのもの」のタイトル。『ひらり』に始まり『まれ』まで12作。
続いて「名前ベースの愛称」『おはなはん』から『おちょやん』まで8作。
「名前+α」が『繭子ひとり』から13作。この中には『なつぞら』『舞いあがれ』のようにダブルミーニング的に名前を織り込んでいるのも含みます。
「名前ベースの愛称+α」は『純ちゃんの応援歌』など4作。
ここまであわせて37作、34%で約3分の1。やはり多い。
あと「名前ベースではない愛称」というのも考えましたが、なかなかカウントが難しい。
『ごちそうさん』は戦時中に子どもたちを中心にヒロインが食べ物をふるまって、そういうニックネームになりましたが、『ちゅらさん』『あまちゃん』は劇中で一回でもそう呼ばれたっけ?『はいからさん』『やんちゃくれ』はどうだった?と、判断がつかないのでやめておきます。
ちなみに名前そのものタイトルが最も多い時期は2002年から2004年までの3年間。『さくら』『まんてん』『こころ』、『てるてる家族』を跳ばして『天花』『わかば』の6分の5作品。戦後スタートの『てるてる』を除いて、みんな現代ものだし、いわゆる「自分探しもの」全盛期と重なっているのは興味深いところです。
『ちむどんどん』最終回の大ワープは朝ドラ史上最長か
最後までツッコミどころ満載だった『ちむどんどん』。最終回の大きなツッコミどころは、歌子(上白石萌歌)が生死を彷徨っている1985年から202X年に大ワープする展開からの暢子(黒島結菜)を筆頭に主要登場人物がコントレベルの老けメイク。「『カムカムエブリバディ』を超える大ワープ」「ドリフへのオマージュか」といわれています。
最終回だけ時間がとんでヒロインが老けメイクになるのはレジェンド『おはなはん』以来の伝統芸。ただ、これまでは本筋がほとんど終わった上で、最後のまとめとしての老境。生死不明状態でのワープなんて聞いたことがない。
老けメイクについては以前、書いてます。
今回の大ワープ、手近なところで『カムカム』と比較されていますが、過去最長を争うライバルは藤吉久美子主演の『よーいドン』。
1947年、夫(曾我廼家文童)が復員してきたところで本筋は終わって、最終回は放送リアルタイムの1983年。なのでワープ期間36年。
以前、調べました。
『ちむどんどん』の場合、「やんばるちむどんどん」開店は1985年(202X年、店の黒板に書いてある)。202X年は制作発表段階から「1972年の沖縄返還からの50年」を描くといっているので2022年でしょう。
ぼやかしているのはコロナ禍により「マスクしてない」とか、最終回放送時点の蔓延状況によっては「千葉から沖縄にくるな」とかいわれるのを回避するためではないかと。
前作『カムカム』その前『おかえりモネ』は最後を未来にすることで対策してました。こちらは50年縛りのため、はっきり未来の年にするわけにはいかなかったので202X年ではないかと。
それで1985年から2022年だとワープ期間37年。『よーいドン』越えです。
終戦直後から放送リアルタイムに飛べば、終戦から遠くなるごとに長いワープ期間を取れそうなものです。しかしその後の80年代は記憶に新しいためかそのパターンはなく、90年代に入ると現代ものが主流になったため、またなくなりました。
『ゲゲゲの女房』以降、一代記ものが復活した後には『おひさま』があります。本筋は1953年までで最後は2011年と驚異の半世紀越え。ただヒロインが井上真央から若尾文子に変わっていて、さらに最初から老境のヒロインが人生を振り返る形式だったため、突然ワープしたのとは違いましたね。
BKドラマのエース藤山直美の時代『天下茶屋のはっちゃん』から『芋たこなんきん』まで
『芋たこなんきん』再放送もついに完結。本放送時はヒットとはいえない視聴率でしたが、今回は好評で再評価されていてよかった。
リアルタイムで本放送を見ていた身としては、藤山直美は平成前半ぐらいのNHK大阪(BK)制作ドラマの切り札的存在だったわけで、それでこれだけ面白いのにヒットしないのはどういうことか、と思っていました。やっぱり若いヒロインじゃないと受け入れられないのか、この頃の朝ドラというのにみんな興味がないのか?
以前「藤山直美はNHK大阪の最後の切り札的存在」と書いたことがありました。藤山直美を軸にしたBKドラマを振り返ってみます。
子役時代もありますが、本格的にBKドラマに出演したのは『欲しがりません勝つまでは』(1979)の主演から。田辺聖子の戦時下での女学生時代を描く、という『芋たこなんきん』の「楽天乙女」編と同じシチュエーション。
続いて『なにわの源蔵事件帖』(1981)。明治初期、警察の下で働いた目明かし「海坊主の親方」こと赤岩源蔵(桂枝雀)の活躍を描きます。藤山直美は親方の娘役。
好評で83年に続編『新・なにわの源蔵事件帳』ができますが、前作も出演を渋っていた桂枝雀を引っ張り出せなかったのか最初から諦めたのか、主演は芦屋雁之助に交代。
続いては朝ドラ初登場の『心はいつもラムネ色』(1984)。漫才の父と言われた秋田実がモデルの作品。藤山直美はミヤコ蝶々がモデルの役。相方で夫の南都雄二がモデルの役を演じるのは当時・桂小米朝、現・米團治。
続いても朝ドラ『純ちゃんの応援歌』(1988)。こちらはNHK総合で再放送したところ。
『純ちゃんの応援歌』放送中の88年11月に主演した単発ドラマが『天下茶屋のハッちゃん』。初放送当時は関西ローカルだったためか知名度がなく、Wikipediaの藤山直美「主な出演作」の項でもこのドラマは書かれていないんですが、藤山直美のコメディエンヌとしての才能を強く見せてくれた重要な作品だと思います。
演出の長沖渉はその後『ふたりっ子』のメイン演出で、天下茶屋舞台をつなげています。
脚本は、当時は『部長刑事』を書くなど大阪ローカルだった小松江里子。翌89年に続編『天下茶屋のハッちゃん~初恋編~』を書いたあと、90年1月から中山美穂・織田裕二の『卒業』(TBS)で東京進出しています。
どういうドラマか一言でいうと『じゃりン子チエ』の母娘版。娘役は芦屋雁之助の娘の西部里菜、『心はいつもラムネ色』に続いて上方芸能レジェンド2世の共演でした。
藤山直美がブレイクするのは90年、父・藤山寛美の死がきっかけ。91年の一周忌追善公演で主演し「弟子についたわけでもないのに親子だけでここまで演技を受け継げるのか」と驚かされました。
続いて朝ドラ、92年の『おんなは度胸』のヒロインいじめ役。
これで全国区になり、ドラマ新銀河枠で人情喜劇三部作で主演します。第一作が94年『大阪で生まれた女やさかい』で豆腐屋の娘で何でも屋のアルバイト。
95年が『この指とまれ!!』。舞台は大阪中心部の小学校。タワマンができてる今と違って当時の都心部は人口減少で、ヒロインは5年6年の複式学級の担任。
産科看護師役でカメオ出演的だった朝ドラ『ふたりっ子』(1996)を挟んで、97年に『この指とまれ2』。ヒロインは医師で、前作とは設定は違うけど、藤山直美、桂枝雀、岸部一徳、國村隼の主要キャストは同じという、近年ではあまりないパターンの続編で、これは以前書きました。
さらに連れ子役で茉奈佳奈も加わり、この時点のBKドラマオールスターキャストの趣がありました。
パート1,2とも脚本は井上由美子。同時期にBSで曽野綾子原作の『天上の青』(1994)、高村薫原作の『照柿』(1995)も担当。シリアスとコメディ、原作ものとオリジナルの両方書けるところを見せて、現在再放送中の『ひまわり』に繋がります。
2000年の朝ドラ『オードリー』は序盤のみの出演。また同年には映画『顔』に主演し、助演に國村隼、岸部一徳とおなじみメンバー。
2003年の単発ドラマ『われ、晩節を汚さず~新夫婦善哉~』での主人公の妻役を挟んで、『芋たこなんきん』。
ここまでの藤山直美主演作の集大成でもあり、また『芋たこなんきん』の一年後が『ちりとてちん』であったことを考えると、BKドラマがここで次のステージに行った感があります。藤山直美のBKドラマ出演はこのあとなく、やり切ったんでしょうね。
ここまであげた作品、NHKオンデマンドで見られるといいんですが、朝ドラ以外は残念ながらありませんね。あったら喜んで契約するのに。