朝ドラ2006〜2009:長期低落傾向脱出へ種まき
2006年はNHK放送開始70周年だからか長期低落を続ける朝ドラをなんとかしようということなのか例年とちょっと違う。東京制作の上期『純情きらり』と大阪制作の下期『芋たこなんきん』を二作同時発表。
どちらもひさびさに主演オーディションでない起用で、放送開始時20歳ながら映画出演多数で将来を期待されていた宮崎あおいと、実績十分で当時のNHK大阪としては最後の切り札的存在だった藤山直美。
さらに1999年の『すずらん』以来の太平洋戦争を含む時代背景。
『純情きらり』は期待通りにヒットしましたが、『芋たこなんきん』は内容は評価されたおものの視聴率的にはイマイチ。朝ドラヒロインとしては年齢が高すぎることと、大人になったヒロインが折に触れて少女時代や女学生時代を回想する構成がなじみにくかったのでしょうか。
翌年も上期東京制作と下期大阪制作は似たような傾向で、ベタな『どんど晴れ』は視聴率がよかったけど、『ちりとてちん』は内容の評価は高くDVDは売れたものの視聴率は伸び悩み。よく見てないとおもしろさがわからず時計代わりに見にくいのが原因。見返すことができるNHKオンデマンドはサービス開始前、みんなで共有できるSNSの普及もまだでした。
ただ『ちりとてちん』、その後の朝ドラへの影響は大きいものがあります。
過去と現在が複雑にからみあう構成は『あまちゃん』。「研いで出てくるのは塗り重ねたもんだけ」など、落語・若狭塗箸という職業とテーマが響きあうのは『カーネーション』『ごちそうさん』。
『ちゅらさん』のヒロインパターンの自覚化をうけてこれまでの前向きなヒロインをひっくり返したネガティブキャラは『ゲゲゲの女房』『あまちゃん』など。
最終的には落語家ではなく落語家のおかみさんになりたいとなり、人を支えるヒロインは『ゲゲゲの女房』『ごちそうさん』『マッサン』など。
『ちりとてちん』がなければ、2010年以降の朝ドラ復活もうまくいったかどうか、という重要な作品です。
この時期、勢いがよかったのはここまで。以後2年4作で長期低落傾向も極まり、ついに朝ドラのあり方が見直されます。