BKドラマのエース藤山直美の時代『天下茶屋のはっちゃん』から『芋たこなんきん』まで
『芋たこなんきん』再放送もついに完結。本放送時はヒットとはいえない視聴率でしたが、今回は好評で再評価されていてよかった。
リアルタイムで本放送を見ていた身としては、藤山直美は平成前半ぐらいのNHK大阪(BK)制作ドラマの切り札的存在だったわけで、それでこれだけ面白いのにヒットしないのはどういうことか、と思っていました。やっぱり若いヒロインじゃないと受け入れられないのか、この頃の朝ドラというのにみんな興味がないのか?
以前「藤山直美はNHK大阪の最後の切り札的存在」と書いたことがありました。藤山直美を軸にしたBKドラマを振り返ってみます。
子役時代もありますが、本格的にBKドラマに出演したのは『欲しがりません勝つまでは』(1979)の主演から。田辺聖子の戦時下での女学生時代を描く、という『芋たこなんきん』の「楽天乙女」編と同じシチュエーション。
続いて『なにわの源蔵事件帖』(1981)。明治初期、警察の下で働いた目明かし「海坊主の親方」こと赤岩源蔵(桂枝雀)の活躍を描きます。藤山直美は親方の娘役。
好評で83年に続編『新・なにわの源蔵事件帳』ができますが、前作も出演を渋っていた桂枝雀を引っ張り出せなかったのか最初から諦めたのか、主演は芦屋雁之助に交代。
続いては朝ドラ初登場の『心はいつもラムネ色』(1984)。漫才の父と言われた秋田実がモデルの作品。藤山直美はミヤコ蝶々がモデルの役。相方で夫の南都雄二がモデルの役を演じるのは当時・桂小米朝、現・米團治。
続いても朝ドラ『純ちゃんの応援歌』(1988)。こちらはNHK総合で再放送したところ。
『純ちゃんの応援歌』放送中の88年11月に主演した単発ドラマが『天下茶屋のハッちゃん』。初放送当時は関西ローカルだったためか知名度がなく、Wikipediaの藤山直美「主な出演作」の項でもこのドラマは書かれていないんですが、藤山直美のコメディエンヌとしての才能を強く見せてくれた重要な作品だと思います。
演出の長沖渉はその後『ふたりっ子』のメイン演出で、天下茶屋舞台をつなげています。
脚本は、当時は『部長刑事』を書くなど大阪ローカルだった小松江里子。翌89年に続編『天下茶屋のハッちゃん~初恋編~』を書いたあと、90年1月から中山美穂・織田裕二の『卒業』(TBS)で東京進出しています。
どういうドラマか一言でいうと『じゃりン子チエ』の母娘版。娘役は芦屋雁之助の娘の西部里菜、『心はいつもラムネ色』に続いて上方芸能レジェンド2世の共演でした。
藤山直美がブレイクするのは90年、父・藤山寛美の死がきっかけ。91年の一周忌追善公演で主演し「弟子についたわけでもないのに親子だけでここまで演技を受け継げるのか」と驚かされました。
続いて朝ドラ、92年の『おんなは度胸』のヒロインいじめ役。
これで全国区になり、ドラマ新銀河枠で人情喜劇三部作で主演します。第一作が94年『大阪で生まれた女やさかい』で豆腐屋の娘で何でも屋のアルバイト。
95年が『この指とまれ!!』。舞台は大阪中心部の小学校。タワマンができてる今と違って当時の都心部は人口減少で、ヒロインは5年6年の複式学級の担任。
産科看護師役でカメオ出演的だった朝ドラ『ふたりっ子』(1996)を挟んで、97年に『この指とまれ2』。ヒロインは医師で、前作とは設定は違うけど、藤山直美、桂枝雀、岸部一徳、國村隼の主要キャストは同じという、近年ではあまりないパターンの続編で、これは以前書きました。
さらに連れ子役で茉奈佳奈も加わり、この時点のBKドラマオールスターキャストの趣がありました。
パート1,2とも脚本は井上由美子。同時期にBSで曽野綾子原作の『天上の青』(1994)、高村薫原作の『照柿』(1995)も担当。シリアスとコメディ、原作ものとオリジナルの両方書けるところを見せて、現在再放送中の『ひまわり』に繋がります。
2000年の朝ドラ『オードリー』は序盤のみの出演。また同年には映画『顔』に主演し、助演に國村隼、岸部一徳とおなじみメンバー。
2003年の単発ドラマ『われ、晩節を汚さず~新夫婦善哉~』での主人公の妻役を挟んで、『芋たこなんきん』。
ここまでの藤山直美主演作の集大成でもあり、また『芋たこなんきん』の一年後が『ちりとてちん』であったことを考えると、BKドラマがここで次のステージに行った感があります。藤山直美のBKドラマ出演はこのあとなく、やり切ったんでしょうね。
ここまであげた作品、NHKオンデマンドで見られるといいんですが、朝ドラ以外は残念ながらありませんね。あったら喜んで契約するのに。