ドラマ・クロカイブ

AllAboutドラマガイドが書ききれなかったことをつづります。

『スカーレット』も『麒麟がくる』も琵琶湖が重要

『スカーレット』を見ていて気になっていては琵琶湖がほとんど出てこないこと。
滋賀県は琵琶湖だろという以外に、信楽という山あいが主な舞台だけに、重要なシーンは広がりのあるところに出てきてほしかった。2時間ドラマの最後は崖で犯人が告白するようなもので。

www.nhk.or.jp

近年の朝ドラだと『半分、青い。』も岐阜県の山の中の街が舞台だったけど、東京に行っている時間の方が長かった。『スカーレット』はほとんど信楽でちょっと大阪。

 琵琶湖が出てきたのは初回の一家がリヤカーに家財道具を載せて滋賀県に来たときと最終回でみんなで琵琶湖にいったとき(初回では父が、最終回では貴美子が「ようみとけ。こっちの心も大きくなる」と繰り返してる)、そして武志が入院した滋賀県立中央病院の病室からも琵琶湖が見えた、その3回だと思います。大事だから最初と最後に出てきたということでしょうけどね。

 

朝ドラをずっと見ていると東京制作より大阪制作の方が金がかかっていないように見えます。俳優の交通・宿泊費がかかるとかスタジオの広さとかによるものだとは思うのですが、『なつぞら』と『スカーレット』はそれだけでは説明できないような。100作記念作で予算を使って、『スカーレット』が割をくったのではないか、と邪推したくなります。
働き方改革」も原因かもしれません。ロケもスタジオのセットチェンジもスタッフに負担がかかるので少なくしようという。

 

琵琶湖登場シーンをチェックするのに初回を見返して思い出したのは、川原一家なぜ大阪から琵琶湖岸を通って信楽にいったのか問題。
普通は旧国鉄信楽駅まで行くだろうからおかしい、といわれていました。しかし、荷物が大き過ぎて鉄道ではいけなかったのかもしれない。

そこで戦後すぐはまだ使われていた水運を使った可能性を考えました。淀川で京都の伏見までいけます。『あさが来た』の姉妹は舟で京都から大阪に嫁入りし、その後も再々、京都に戻りますけどあれもたぶん舟。
伏見から京都の中心部には昔は高瀬川でいけたけど(森鴎外の「高瀬舟」がそれ)、大正時代に水害でなくなったようだ。そこはリヤカーを引っ張って岡崎まで行くと琵琶湖疏水を使って大津まで行ける。それなら琵琶湖岸を通って信楽にいくというのもコースとしてはおかしくない。上り坂なのでたいへんですけど。

 

自動車や鉄道が発展した現代では忘れられがちですけど、昔は水運が重要でした。織田信長の天下統一でも琵琶湖を使って陸路よりはやく移動できるのは重要で、安土城は今は埋め立てられた湖を使って琵琶湖にアクセスできました。

明智光秀坂本城羽柴秀吉長浜城も琵琶湖岸です。いままでの大河ドラマではあまり描かれませんでしたが、『麒麟がくる』で琵琶湖の戦略的重要性が描かれるとおもしろいのですが。初回、光秀(長谷川博己)が堺に行く途中に琵琶湖で舟にのって「広いのー」と感心していました。きっと心も大きくなったことでしょう。

さすがジャパネットたかた

BSテレ東で2月20日(木)17:58から始まった『マニアックな人々』。
初回のテーマが「時代劇にすべてを捧げた愛すべき人たちへ」ということで見てみました。
MC松尾貴史でゲストに松平健京本政樹。ゲストの時代劇トークをまじえつつ、紹介されたマニアックな人々は

食料品店の時代劇村

www.bunka.pref.mie.lg.jp

店主がちょんまげ姿の洋食サムライ

nlab.itmedia.co.jp

散髪屋さんの小阪城

www.w-higa.com

1/23のミニ姫路城

kaneharamiwa.club

時代劇映画を自主制作

www.creators-station.jp

ここまではありそうな企画だけど、ちょっとおかしいなと思ったのはこれを伝えるリポーター「ジャパネットたかた入社二年目、新人MCの西川由梨乃です!」

えっ、と思って調べるとこの番組、スポンサーだけじゃなく制作もジャパネットたかた。自社スタジオを持っているだけにこんな番組も制作できるのか。いや、待てよジャパネットたかたがこのまま終わるわけない、だいたいこの番組、途中にCMが入ってない。
見守っていると2時間番組が90分で終了。残り30分ではじまったのは「長谷川伸シリーズDVD-BOX」のテレビショッピング。やっぱりか。

長谷川伸シリーズ』東映制作で1972〜1973年にNET(現・テレビ朝日)系で放送された一話完結の時代劇。鶴田浩二主演「沓掛時次郎」、勝新太郎主演「一本刀土俵入」など股旅ものを得意とした長谷川伸の小説群をドラマ化したもの。
今でも芝居になることが多い長谷川伸作品、これを見ておぼえました。

2010年にDVD-BOXがつくられた「幻の作品を1000枚限定受注生産」といっているけどAmazon見ると10年前の在庫がまだある。

www.amazon.co.jp
それが84300円(税込み)で、今回が33000円(税込み)。東映ビデオでは37600円(税別)だから、ジャパネットに連動して下げたか。

www.toei-video.co.jp

番組を撒き餌にしてDVDを売るというのはさすがジャパネット。きっと1000枚売り切るんでしょう。

2回め、2月27日放送のテーマは「家電」。北海道の掃除機マニア少年が出てきて、日立の工場に見学。テレショップはもちろん日立の掃除機と炊飯器、わかりやすい。

3月の番組表を見ると次の放送予定はなし。果たしてこのまま続いていくのか?続くとしたらどんなマニアックな人々とそれに連動した商品が出てくるのか?

NHKは『いだてん』をあきらめてない

2020年4月の新年度が近くなって、NHK BSプレミアム大河ドラマと朝ドラ再放送情報がでてきました。

日曜朝6時からの大河ドラマ再放送は『太平記』。これは『麒麟がくる』と同じ池端俊策脚本つながりですね。「『太平記』で室町幕府の始まりを書いたから、次は室町幕府の終わりを書きたかった」といっています。

大河ドラマでは『太平記』でしか描かれていない南北朝時代足利尊氏(真田広之)と足利直義(高嶋政伸)の兄弟が戦う「観応の擾乱」も、これまでなじみがありませんでしたが、新書がベストセラーになりました。
見返すのが楽しみです。

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月〜土7:15からの朝ドラ再放送は『はね駒(こんま)』。

BSプレミアムでの朝ドラ再放送は『さくら』以降のハイビジョン化された作品が中心で一昨年までの例外は『ちゅらさん』のみ。しかし朝ドラ100作記念『おしん』が話題になり、昔の作品もまだまだいけるということなのか引っ張り出されてきました。

おしん』から現代ものに転換するきっかけになった『青春家族』までの間のヒット作というと『澪つくし』と『はね駒』。母親役の樹木希林人気もポイントでしょうか。父親役の小林稔侍、夫役の渡辺謙の二人はこの作品でブレイクしました。

dramakuro.hatenablog.jp

そしてもう一つ『いだてん』も4月6日18:15から(初回は18時から)、毎週月〜水の変則で再放送されます。東京オリンピックを見据えてNHKもまだ『いだてん』をまだあきらめていないんですね。


ああいうややこしい構造の作品は昔から視聴率はとりにくいんですよ。代表的なのは1983年TBSの『淋しいのはお前だけじゃない』。大衆演劇一座が舞台、ドラマのストーリーと劇中劇がからみあう複雑な構造で、一部には絶賛されたけど視聴率的にはさっぱりでした。その後、好きな人が名作と言い続け、CSで放送される時代になって知られるようになりました。
宮藤官九郎脚本作品『タイガー&ドラゴン』は大衆芸能(大衆演劇と落語)、借金、西田敏行の三要素が共通していて、クドカンも好きだけど「マネはしてないです」といっています。

何回か再放送すれば、そのうち風向きが変わるような気がしますが、東京オリンピックが終わってしまうとどうなるでしょうか。

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やっぱりドラマの勢いで結婚してはいけない

 

東出昌大唐田えりかと不倫で杏と別居の話題が芸能ニュースを賑わせています。

ドラマで共演した俳優同士の結婚については、『北の国から 2002遺言』の吉岡秀隆内田有紀が離婚したときに書いたことがあります。

allabout.co.jp

共演すると濃い人間関係となるけど、撮影が終わると会う理由がなくなってしまう。さらに作品中で恋人役だと疑似恋愛になってしまいます。それで判断を誤ってしまう人が多くなるんでしょうね。

ドラマの恋愛関係のまま結婚してしまうリスクというのも、今回あきらかになりました。今後『ごちそうさん』を見ると視聴者は不倫を思い出してしまいます。ヒット作を傷つけられて、NHKはカンカンでしょう。
今後、同じようなパターンで結婚しようとする俳優は反対される可能性が強くなりそうです。やっぱりドラマの勢いで結婚してはいけない。

 

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さて東出昌大テレビ朝日系『ケンジとケイジ』に桐谷健太とダブル主演中。第一話は12.0%と1月スタートの民放連ドラの中では『トップナイフ』に次ぐいい数字でしたが、不倫が報じられた直後の2話は9.7%と急落。

正直、第一話を見てもむりやりコメディにしようとしてスベっている感がありました。刑事と検事の立場の違いを描くのがテーマの作品だから、『踊る大捜査線』みたいに普通の演技しているのがおもしろい、というように描くべきではないかと。だから不倫がなくても視聴率は落ちていたと思います。やじ馬視聴者もいたでしょうから、3話はさらにダダ下がりと予想。

 

一方、唐田えりかが病棟クラーク役で出演の『病室で念仏を唱えないでください』は2話で出演シーンカット。こちらの第一話を見ての感想は、内容はいいけど登場人物多すぎ。それでもまだレギュラーキャスト表をみると泉谷しげる土村芳が出演していませんでした(2話から登場)。だから一人減って、見やすくなってます。
1話で伊藤英明演じる救急医で僧侶の主人公の相談相手として、掃除のおばちゃん役の宮崎美子の出番が多かったのに、2話では1シーンだけ。このあたりがカットされたのかもしれません。

 

新記録を狙えるか?三谷幸喜脚本『鎌倉殿の13人』

2022年の大河ドラマ三谷幸喜脚本、小栗旬主演で『鎌倉殿の13人』であることが発表になりました。発表日は1/8。普通はあまり大河ドラマの新作を発表しないような時期ですが、『麒麟が来る』の開始日が遅れて、大河ドラマを放送しない期間ができてしまったので入れてきたんでしょうか。

タイトルは鎌倉幕府幕府将軍(鎌倉殿)に仕える、二代執権の北条義時を中心にした13人の武士の意。三谷幸喜得意の会話劇になりそうな雰囲気。
北条義時はこれまで、あまりドラマの主人公になるような人物ではなく、一番目立った役だったのは1979年の大河『草燃える』で松平健が演じた時でしょう。姉の北条政子(岩下志麻)に「姉さん、そんなこといっちゃって」といったセリフをよくおぼえています。今なら時代劇で現代のことばづかいをするのはアリだけど、当時の大河ドラマでは物議を醸しました。

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クライマックスになるのはたぶん承久の乱。昨年、承久の乱を扱った新書がベストセラーになり、本格的に武家政治が始まった重要な戦いであると認知が高まっているので、大河ドラマにするいいタイミングではあります。

 

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三谷幸喜大河ドラマの脚本を書くのは『新選組!』『真田丸』に続き3作目。
過去、大河ドラマのメイン脚本を最も多く担当したのは

の4作。

3作で続くのは三谷幸喜の他に

でいずれ劣らぬ名脚本家ぞろい。

『鎌倉殿の13人』放送開始時点で三谷幸喜は60歳。4作目は十分に狙える。5作目までいくか?
担当脚本家の高齢ラインはこれまで60代半ばというところでしたが、『麒麟が来る』の池端俊策が現在74歳と大幅に更新してきました。一年と長丁場の大河ドラマを安心して任せられるような脚本家が少なくなっており、また本人も大河ドラマファンを公言しているだけに可能性は強そうです。

近年なかった設定変更『おっさんずラブ-in the sky-』

手堅くヒットすることを期待され、近年は続編ものドラマが増えています。この秋のドラマでは12年ぶりの『時効警察はじめました』に13年ぶりの『まだ結婚できない男』と空白期間の長い続編があり、いつもより注目されました。

そんな続編ものの一つに『おっさんずラブ-in the sky-』がありました。デキは期待はずれだったようで失速。その理由はともかく、雑誌LDK12月号の連載「小田慶子のドラマ斜め読み!」が興味深い指摘をしています。
前作の舞台が不動産会社で今回はLCC格安航空会社のピーチ。続編でこんな変更をしたのは「1978年から放送された『熱中時代』で水谷豊さんが「教師編」「刑事編」の2パターンを演じたという事例以来」とのこと。

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舞台設定となる職業が続編で変わるというのは昔はよくありました。最も有名なのは『ありがとう』の1〜3シリーズでしょう。水前寺清子山岡久乃石坂浩二など主要メンバーは変わらず、警察と保育園、病院、魚屋と八百屋など商店街と設定が変わりました。
いわれてみると80年代以降はなくなったイメージ。しかし完全になくなったわけでもないだろう、と調べてみました。

80年代に入ってみつけたのは石立鉄男主演の『天まであがれ!』。1982年のパート1が脱サラして喫茶店兼スナック店主なった主人公が甥と姪(甥は坂上忍)をひきとるという『パパと呼ばないで』路線。ちなみに主題歌は出演していた嶋大輔の「男の勲章」。翌年の『天まであがれ!2』は警官に変わっています。

しかし80年代前半ではまだ誤差の範囲という気がする。もっと新しいのはないか、探して90年代にみつけました。NHKドラマ新銀河『この指とまれ!!』。藤山直美主演で95年のパート1は小学校教師、97年のパート2は医師。共通する主要キャストは桂枝雀岸部一徳國村隼國村隼はこの2作の間に『ふたりっ子』でブレイクし、映画『萌の朱雀』で評価を高めたためか、パート1の児童の父からパート2ではヒロイン夫とポジションアップ。
藤山直美主演の朝ドラ『芋たこなんきん』では國村隼が再び夫役、祖父役に岸部一徳と、亡くなった桂枝雀を除きまた顔をそろえることになります。

こういうパターンのドラマは昔風の劇団興行という感じがします。同じようなメンバーでちょっと違う演目をするという点で。それに対して、最近は同じ設定のまま続編を何作も続けていくのが主流で、それはロングランを続ける劇団四季みたいなものでしょうか。

 

沢尻エリカ代役のポイントは「期待の割には」

沢尻エリカが麻薬取締法違反で逮捕され、大河ドラマ麒麟が来る』の主要キャスト・濃姫役を降板。注目の代役は川口春奈となりました。

個人的には「事務所からプッシュされているけど期待の割には売れていない」女優になるだろうと予想していました。というのも、制作側の希望する女優にもオファーはするだろうけど、受けてくれる可能性は低いし、時間的制約があるのでそう何人に聞くわけにもいかない。そうなると、各事務所が「うちの何某が空いてます」と売り込んでくるだろうから、その中から選ぶのが手っ取り早い、と考えたからです。

川口春奈リハウスガール出身で唐沢寿明山口智子夫妻を筆頭に竹野内豊反町隆史などを擁する大手芸能事務所の研音に所属。『桜蘭高校ホスト部』で連ドラ&映画初主演、山田涼介版『金田一少年の事件簿』のヒロインと順調にステップアップ。しかし2013年のゴールデンタイム連ドラ初主演の『夫のカノジョ』が低視聴率に終わり、これでネガティブなイメージがついてしまいました。

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研音って「早いうちに主演を経験させて大きく育てる」という方針らしいんですが、ドラマが高視聴率をとれていた時代はよくても、近年はむずかしい。一歩間違うと『夫のカノジョ』のように大コケしてしまいます。
最近では杉咲花が『花のち晴れ』『ハケン占い師アタル』をこなして、2020年秋からの朝ドラ『おちょやん』につなげています。次は現在、深夜ドラマ『新米姉妹のふたりごはん』主演中の大友花恋と1月からのテレビ東京深夜『ゆるキャン△』主演が決まった福原遥。うまく乗り越えられるでしょうか。

 

それはともかく「事務所からプッシュされているけど期待の割には売れていない」女優になるのは予想できていましたが、事務所別にだれをおしてくるのか予想していく中で、研音からだと成海璃子じゃないかと思っていたので、そっちはハズレ。

成海璃子、デビューは『TRICK仲間由紀恵が演じるヒロイン・山田奈緒子の少女時代。その後、研音入りして2005年の『瑠璃の島』で連ドラ初主演。しかし人気コミック原作で櫻井翔蒼井優の映画版がヒットした『ハチミツとクローバー』の連ドラ主演をするものの低視聴率に終わり、こちらも事務所の期待ほどには売れていません。
ただNHK土曜時代劇咲くやこの花』で主演、大河ドラマも『平清盛』で主要人物の平滋子を演じ、時代劇経験があります。また昨年の『昭和元禄落語心中』のヒロイン・小夏もよかった。

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最後に、こういう話題で思い出すのは野村宏伸。製作発表前での主役交代はニュースにはなりませんが、そこそこあります。そんなときにプロデューサにすばやく電話をかけてきたのが野村宏伸のマネージャー「うちの野村、空いてます」。それで決まった作品もあると聞いたことがあります。
野村宏伸が天狗になってた時は「オレをもっと売れよ、それがマネージメントだろ!」といっていたということですが、それを聞いて「いやいや、知らないところで仕事してたよ」と思っていました。