ドラマ・クロカイブ

AllAboutドラマガイドが書ききれなかったことをつづります。

『ドクターズ〜最強の名医〜』は再連ドラ化されるのか

前回に続いて連ドラ化されるのかどうかシリーズで『ドクターズ〜最強の名医〜』新春スペシャル。連ドラとして始まりましたが、2015年3月に第3シリーズが終わってから2年9ヶ月ぶりのスペシャルが放送。なぜ久しぶりになったんでしょうか。

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忖度するに堂上たまき院長役の野際陽子さんの健康問題があったんじゃないかと思います。闘病していた野際さん、準レギュラーの『警視庁捜査一課9係』や、出る時は出るけど出ない時はさっぱり姿を見せなかった『やすらぎの郷』、それに同じく新春スペシャルの『必殺仕事人』には出演しましたが、主要キャストで登場シーンが多い『ドクターズ』はキツくて出演できず、そのためシリーズが中断していたんではないでしょうか。それが昨年お亡くなりになったため、制作側も踏ん切りをつけて、院長を辞めてブータンに行った設定にしたんではないかと。

スペシャルは視聴率もそこそこよかったようです。森山(高嶋政伸)が院長になったことで堂上総合病院の前途に不安がでてきたので続きが気になるところですが、再連ドラ化はあるのか?
それにはまた別の問題があります。これまで一人で『ドクターズ』の脚本を書いている福田靖、10月からの朝ドラ『まんぷく』を担当するので忙しいという問題が。
『ドクターX』も同じ問題がありました。2012年10〜12月の第1シリーズを一人で書いた中園ミホでしたが2013年の第2シリーズと2014年の第3シリーズの間に『花子とアン』を書かなくっちゃいけない。そのため第2シリーズ以降は分業体制にして中園ミホ以外も書くようにしています。
いままで一人で書いていた『ドクターズ』、今更分業体制にできるのか?『コード・ブルー』も1,2シリーズは林宏司で昨年復活した第3シリーズは安達奈緒子に変わり、そのためか恋愛要素が増えるなど、賛否が分かれます。

脚本家を変えずに『まんぷく』の前に『ドクターズ』第4シリーズを書くのか、それとも次もスペシャルでつなぐのか?そのどちらかでしょうか。

『忘却のサチコ』は連ドラ化されるのか

テレビ東京の正月スペシャル『忘却のサチコ』。
いろいろなドラマの要素を足してできていたという感じで、おもしろくまとまっていたけどテレビ東京ドラマとしてはトガッてないという感じ。

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ベースになっているのは『孤独のグルメ』に代表されるいわゆる飯テロもの。
そして制作会社がホリプロで、主演はホリプロ所属の高畑充希。これは同じくホリプロ制作でホリプロ・ブッキング・エージェンシー所属の吉田鋼太郎主演、そして高畑充希も出演していた『東京センチメンタル』の路線です。
またタイトルとヒロインの変わったキャラクターは原作通りとはいえ『過保護のカホコ』を思い出させます。
さらにヒロインが文芸誌の編集部にいて、担当している大作家を演じているのが鹿賀丈史(ホリプロ所属)というのは『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』と同じでキャラもカブっている。

『東京センチメンタル』の路線だとすると同じく連ドラ化されるかどうかというのが気になります。『東京センチメンタル』は2014年の年末に単発スペシャルとして登場。1年強おいた2016年1月からドラマ24枠で連ドラ化。さらに2017年正月スペシャル。
『忘却のサチコ』はこの流れにのって連ドラ化されるのか?それは制作会社としてのホリプロ高畑充希をマネジメントするホリプロとの両面のせめぎ合いによるのでしょうか。
制作会社としてはつくりたいけど、マネジメント会社としては高畑充希にもっといい主演のクチがあればそちらをとりにいきたい。

ところでホリプロ制作で所属俳優が主演だというと「ゴリ押しだ」という声もあるでしょうが、制作会社としてのホリプロでも主演はホリプロ俳優ではない、ということもよくあります。例えば『僕たちがやりました』は主演の窪田正孝に相手役の永野芽郁、共にスターダストプロモーション所属。ホリプロ俳優というと母親役の榊原郁恵ぐらいでした。

 

早坂暁脚本といえば

昨年末、早坂暁さんが亡くなられた時、三谷幸喜朝日新聞の連載エッセイで代表作の一つ『天下御免』『天下堂々』について書いていました。同級生の父親が岡っ引き・スッポンの市兵衛役の村上不二夫ということで訪問。サイン入りの脚本をもらって、その中に「脚本・早坂暁」とあり、初めておぼえた脚本家の名前だったと。

1月1日放送の『風雲児たち蘭学革命篇~』は『天下御免』と平賀源内、杉田玄白前野良沢田沼意次など登場人物が重なっていて、意識して書いたようです。見た感じは前野良沢(片岡愛之助)と杉田玄白(新納慎也)がいかに解体新書をつくり、また袂を分かったのかを中心に、手堅くおもしろくまとめていました。もうちょっと弾けた方がよかったような。

大河ドラマ、江戸時代は元禄時代まではよく描かれ、それから『八代将軍吉宗』があって、その後は明治維新に飛んでしまい、江戸時代後期は無し。田沼意次の時代はやればおもしろそうな気がするんですけどね。


早坂脚本に話を戻すと、自分も『天下御免』は見ていますが、その時はまだ「早坂暁」という名前は気にしてなかった。印象に残ったのはNHKのドラマ枠「ドラマ人間模様」からです。「ドラマ人間模様」スタートは1976年で翌77年には俳人・西東三鬼が主人公の『冬の桃』に78年に森繁久彌が老結婚詐欺師を演じる『赤サギ』あたりから。
78年には大岡昇平原作の『事件』がありますが、これは中島丈博脚本。79年の『続・事件 海辺の家族』から早坂暁に。原作があると思って引き受けたらオリジナル脚本だった、と本人が語っていました。81年からは『夢千代日記』も始まります。『花へんろ・風の昭和日記』シリーズもあり、「ドラマ人間模様」といえば早坂暁脚本が看板でした。

演出サイドの看板は深町幸男。『冬の桃』で早くも早坂・深町コンビ。これより前の深町幸男、新東宝出身の映画スタイルで脚本を自分で変えるクセがあり、テレビドラマではうまくいっていませんでした。NHKの上司が一計を案じ、筆が遅くて「遅坂」と呼ばれていた早坂となら脚本を変える時間もないだろうと組ませて成功。その後も『事件』『夢千代日記』『花へんろ』とコンビを組みます。

 

「ドラマ人間模様」が終わったのは1988年。バブルのさなかではあんな暗くて深いドラマは受けいれられません。早坂脚本を見る機会も少なくなり、テレビドラマ脚本の最後は1998年の『七人の刑事』最後のスペシャルでした。

代表作『夢千代日記』が1月8日〜10日に再放送されます。

 

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『川は泣いている』in『やすらぎの郷』

9月6日放送『やすらぎの郷』第113話は九条摂子(八千草薫)の死にからめて、ドラマ『川は泣いている』のことがでてきました。『やすらぎの郷』では、現実のはなしを元にしていてもだいたい仮名を使うのですが、『川は泣いている』はめずらしくそのまま。倉本聰脚本でテレビ朝日系の放送と同じなので、気を使わなくてもいいからでしょうか。

 

『川は泣いている』のあらすじは
葬儀屋社長(岩城滉一)の弟(東幹久)は大学受験に失敗し葬儀屋を手伝うことになる。しかし兄から4月までの間、大病院の食堂でバイトするようにいわれ、さらに食堂の電話があるパターンで鳴ったら家に連絡するように、と謎の指示をだされる。実は食堂の電話は病院に勤務する兄の愛人(いしだあゆみ)からの「もうすぐ人が死ぬ」というサインであり、それを聞いて葬式の営業に出かけるのであった。また同じ病院に大歌手(タイトルと同名の主題歌を歌う堀内孝雄)も入院していて、その容態もマスコミの注目を集め……
というもの。


病院と葬儀屋を舞台に、生と死をテーマにした倉本聰らしい好きな作品です。ただ、あまりヒットとはいえなかったような。放送年が1990年、トレンディドラマ全盛期だったからでしょうか。
DVDや動画サービスで見られるところはなさそうですが、CS,CATVでたまに流れます。

 

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『ひよっこ』岡田恵和の立てこもり

ひよっこ』で倒産した向島電機、最後の大きな事件は兼平豊子(藤野涼子)の立てこもり。岡田恵和脚本は立てこもりが好きで、朝ドラの前作『おひさま』でもありました。
真知子(マイコ)は「安曇野の帝王」と呼ばれる資産家の父親(平泉成)の命で卒業後は許嫁と結婚することになっていましたが、陽子(井上真央)の兄・春樹(田中圭)を慕う真知子はそれを拒否。家出して陽子と二人で便所に立てこもりました。

これのオリジナルは山田太一脚本の『想い出づくり。』は当時の結婚適齢期・24才になった三人(森昌子古手川祐子・田中裕子)が結婚したら夢がなくなると思い、その前に「想い出をつくろう」とする姿を描いた山田太一脚本の名作です。
最大の山場が結婚式前の立てこもり。佐伯のぶ代(森)はお見合いでレストランやガソリンスタンドを経営している中野二郎(加藤健一)と結婚することになるが、違和感がつのった挙句、久美子(古手川)・香織(田中)とともに結婚式場の控え室に立てこもってしまいます。
岡田恵和は『想いでづくり。』好きなドラマナンバーワンで脚本を書くためのバイブルとまでいっています。

1999年の岡田脚本『彼女たちの時代』は深津絵里水野美紀中山忍の三人娘で明らかに『想い出づくり。』リスペクト作品。最後に「こんなことがあるかも」と結婚式立てこもりのイメージシーンがでてきました。

他に岡田脚本の立てこもりというと『最後から二番目の恋』で長倉万理子(内田有紀)が自分の部屋に立てこもり(立てこもる前から引きこもり気味だったが)。
原作はジョビジョバの舞台ですが映画『スペーストラベラーズ』は銀行強盗の立てこもりです。

後、たてこもりというと歴史ドラマでの籠城戦でしょうか。岡田恵和、まだ時代劇は書いてないと思いますが、やりませんかね?

『やすらぎの郷』と昭和の音楽バラエティ

やすらぎの郷』で新登場、かつての敏腕プロデューサー石上五郎(津川雅彦)。ハワイにいたということは、モデルは『ゲバゲバ90分』などで知られる元日本テレビ井原高忠ですね。『11PM』も企画、大橋巨泉の「セミリタイヤ」は日本テレビを51才でやめて、ハワイで地元ラジオ局を手伝っていた井原がお手本だといわれています。

そして及川しのぶ(有馬稲子)の伝説の番組『しのぶの庭』を復活させる、という構想が飛び出してきて、それはつまり草笛光子の『光子の窓』。井原が放送中にアメリカに視察に行き、帰国してアメリカで得たことをを反映してガラッと現代的に変わったことで知られる伝説の音楽バラエティです。

有馬稲子が『やすらぎの郷』に出演しているのはたぶん、ケア付きマンションに住んでいることを公言しているリアル感なんだろうけど、歌手・及川しのぶというのがよくわからなかった。草笛光子をイメージしていた役だったのね。
そして、実際の草笛光子が出てこないのはなんとなくわかる。元気そうで『やすらぎの郷』に入居してそうにないから。

光子の窓』の構成作家の一人に永六輔がいたけど、安保デモに参加して締切をしばしば破ったため降板。永六輔はその後、NHKで『夢であいましょう』に参加し『光子の窓』のノウハウが流れました。『夢であいましょう』は昨年の『トットてれび』で取り上げられています。
テレビ創成期から活躍している女性というと、ラジオ時代から子役で活躍していた中村メイコNHK放送劇団出身の黒柳徹子が有名だけど(『徹子の部屋』の記念企画「昭和の大スター名場面スペシャル」で中村メイコがゲストでいっしょに名場面を見ていました)、この二人はNHKメイン。同じ年に放送開始した日本テレビサイドでは草笛光子を推したい。この三人、現時点でみんな83才(中村メイコが学年で一つ若いけど、本名・五月、芸名・メイコの5月生まれだから追いついた)です。

草笛光子芥川也寸志と結婚したからか永六輔の件でスポンサーの資生堂の不興を買ったかから『光子の窓』が終了。その後『スタジオNo.1』をはさんで制作されたのが『あなたとよしえ』。「よしえ」は水谷良重、現・二代目水谷八重子。これに出演していたのが藤木孝藤木孝は歌手としてデビューして「ツイスト男」として大ブレイクするものの、本当は俳優をやりたかったと渡辺プロをやめて俳優に転身。当時の渡辺プロは人気者がたくさんいて、渡辺プロ抜きでは音楽番組ができないほどで、絶大な力を持っていました。渡辺プロの逆鱗に触れた藤木は干されてしまったけど、井原はそれに反して起用。

井原は後に局次長に昇進して日本テレビの音楽番組を統括。オーディション番組『スター誕生』を始め、歌手を育てて歌番組『紅白歌のベストテン』に出演させるという流れをつくりました。しかし渡辺プロがNET(現・テレビ朝日)と組んで『紅白歌のベストテン』の裏番組でオーディション番組を開始。このことから日本テレビと渡辺プロが全面戦争状態となり、『スター誕生』の合格者をホリプロなど他にまわして他の芸能プロを育成、渡辺プロ一強体制を崩したのでした。
日本テレビは『世界の果てまでイッテQ!』のイモトアヤコ、最近ではみやぞんなど番組から人気者を生み出す気風が残っています。

話を藤木孝に戻すと、俳優になって最初に所属したのは「にんじんくらぶ」。ここは岸恵子久我美子有馬稲子の三女優が映画会社にこだわらない仕事をしたいと立ち上げた独立映画製作プロダクション。これで有馬稲子とつながった。
そんなつながりを考えながら『やすらぎの郷』を見るとさらに味わい深いものがあります。

紅白歌合戦の審査:ジャニーズファンは締め切りギリギリに投票しろ

2016年の紅白歌合戦、いろいろ話題になっていますが、放送の最後で炸裂したサプライズが紅組優勝。途中経過で白組圧勝かと思ったら、紅組司会の有村架純も驚くまさかの逆転。


玉入れにバードウォッチング

理由は審査方法の変更。昔はゲスト審査員のみの投票でした。70年代に選ばれた視聴者が、80年代からは会場審査で多数派の方にポイントが加わる方式に。ポイントの数え方としては今回復活した玉入れ方式、会場審査集計はバードウォッチング方式が代表的。

その後、一般審査がケータイとかデジタルテレビを使ったものが加わりましたが、メインの審査員の一票に対して一般審査はみんなまとめて一票とか二票とか入れる方式。
今のようにお茶の間や会場の一般審査員の票もゲスト審査員と同じ一人一票になったのは2005年から。これが2015年まで続いて、それが2016年また戻って多くの人がびっくりしたと。

 


審査方法により勝敗は変わってくる

審査方法の変更は紅白の勝負にどのような影響を及ぼしたか?白組の勝ち越し数という形でグラフにしてみました。

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大きなトレンドとして50〜60年代は互角、70〜80年代は紅組やや優勢、90年代に白組が戻しています。そして2005年からは白組圧勝。一般審査員も一人一票になった2005〜2015年は白組の9勝2敗です。

なぜ一般参加比率を上げると白組の圧勝になるのか?これは主に熱心なジャニーズファンの力。組織票として白組を押し上げています。応援の成果か、紅白でのジャニーズ枠はTOKIO初出演の1994年からながらくSMAPと2枠でしたが、2009年に嵐とNYCboysが加わり4枠。その後、順調に増えて2015年に7枠と最大になっています。

今回の審査は「民意を反映していない」という意見がありますが、2005〜2015年の状況は、選挙にたとえると投票率が落ちると固定票が多い根強い支持者のいる政党が浮上するのに似ています。
ジャニーズファンが白組を応援するのは当然です。しかしそれ以外の人にとって白組圧勝というのは見た印象と合っているでしょうか。


紅組に勝たせたかった?

テレビバラエティとしては勝ったり負けたり、拮抗していた方がおもしろい。そんな判断が番組制作側にあったんだと思います。最後になって審査方法変更を明かしたのはバラエティ色の強いクイズでの「最終問題はチャンス問題、10000点です」でいままでの得点はなんだったんだ的味わいもありました。

途中経過の発表回数もいつもより多かったような印象があります。白組優位を見せつけて、ゲスト&ふるさと審査員たちがバランスをとるように紅組に投票させる意図があったんじゃないか?と邪推してます。


だからジャニーズファンのみなさんへのアドバイス、次回はお茶の間投票を締め切り時間ギリギリまで待った方がいい。ただ、来年は来年でまたなにか変えてくるかもしれませんが。