ドラマ・クロカイブ

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なぜ長崎?だから長崎

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出身地のヒット作があるのは長崎ものが多かった市川森一とこのほど半自伝的ドラマ『花へんろ』が復活する早坂暁ぐらい。巨匠レベルしか思い浮かびません。

と書きました。亡くなって長崎や愛媛が舞台のドラマはあまり見なくなるのかと思いましたがそうでもない。


早坂暁は昨年末亡くなりましたが、準備していた『花へんろ特別編 春子の人形』が最後の作品として放送。2011年の市川森一死去からも入れ替わるように長崎舞台で印象的なドラマがNHKで増えています。

まずは2012年の『かすていら』。長崎を代表するアーティスト・さだまさしの自伝的小説が原作で少年時代と家族を描いてます。

 

続いて2013年1〜3月放送の『書店員ミチルの身の上話』。長崎の本屋に勤務の古川ミチル(戸田恵梨香)は恋人(柄本佑)がいるのに東京の出版社営業マン(新井浩文)と不倫して一緒に東京に。すぐに帰るつもりだったが飛行機に乗り遅れ、さらに頼まれて買っていた宝くじが2億円の大当たりで……と思わぬ運命をたどるドラマ。妹役が波瑠で、個人的にはこの直前に『相棒』元日スペシャル「アリス」と続けて見て、注目しはじめました。また同僚で親友役に安藤サクラ、原作の佐藤正午(佐世保出身で現在も在住)は2017年に直木賞受賞、と内容もさることながら後から出世した人が多いのも特徴。

 

2015年の『だから荒野』は専業主婦の森村朋美(鈴木京香)は家族に顧みられないことから家出。自家用車を持ち出しひたすら西へ向かう。途中で車を乗り逃げされるものの長崎原爆の語り部(品川徹)とボランティア(高橋一生)に助けられ長崎へ。かつて原爆により荒野と化した長崎で人々めぐりあう中、朋美は心の中にある「荒野」の存在に気づく。高橋一生がブレイクしたのはこの作品の半年後の『民王』から。ブレイク前をしらない高橋一生ファンに特におすすめです。

2016年は鎌田敏夫オリジナル脚本の『逃げる女』。西脇梨江子(水野美紀)は長崎の養護施設の職員だったが、親友・あずみ(田畑智子)の裏切りにより児童殺しの犯人とされ8年服役した後、再審が認められ釈放。あずみを追って裏切った理由を知る旅にでるが、謎の女(仲里依紗)につきまとわられて……佐世保から平戸、松浦とロケ。仲里依紗の切れた演技がみものです。

www.nhk.or.jp

なぜ長崎なのか?火付け役は長崎市出身の吉田修一原作『悪人』だと思います。新聞連載が2006年で2007年に出版、妻夫木聡深津絵里の映画が2010年公開。

また『だから荒野』の原作者、桐野夏生が「東日本大震災を意識」して書いたといっています。心理的に意識が西へ向かうが、行き着いた先の長崎にはかつて原爆が落ちていた、ということでしょうか。
それに「潜伏キリシタン」が世界遺産登録運動があって今年決定したという要素もあります。

昨年、長崎に旅行にいってきました。隠れキリシタンものを求めて、長崎市から平戸、隣の生月島まで。塩俵の断崖まで行き、片平なぎさ船越英一郎がいそうな見事な崖に、最果てを感じ、納得して帰宅の途につきました。

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