ドラマ・クロカイブ

AllAboutドラマガイドが書ききれなかったことをつづります。

『マー姉ちゃん』低成長時代が朝ドラのパターンを確立した

BSプレミアムで再放送中の『マー姉ちゃん』。朝ドラで明るく楽しい方の代表作といえばこれだよな、と再確認しています。

一番の要因は熊谷真実本人がとんでもなく明るくて、演出方針が熊谷真実そのままでいけだったから。熊谷真実、18歳年下の書道家と結婚して離婚したエピソード聞いてても若い頃とあまり変わってません。

実年齢が5歳上だけど妹役の田中裕子はデビュー作から見事な演技を見せ、近年多い「ヒロインの妹からヒロインに昇格」パターンの先駆と言われてます。

田中裕子より10歳上の藤田弓子も狂気を感じさせる母親を演じて話題に。

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マー姉ちゃん』は79年の作品ですが、この前後、76年の『雲のじゅうたん』から始まって『いちばん星』『おていちゃん』『マー姉ちゃん』『なっちゃんの写真館』『本日も晴天なり』、そして82年の『ハイカラさん』までのNHK東京制作の過去が舞台の7作が、今に至る一般的な朝ドライメージ「前向きヒロインが目標を目指して困難な時代を明るく生きる一代記」をかためたと思います。

ベースは『おはなはん』でそれに『雲のじゅうたん』が女性飛行士という目標を持ち込んで大ヒット。それが踏襲されたんですね。

なぜヒットパターンを繰り返したのか。時代的に「明るく楽しい」というのが求められていたからでしょう。オイルショック後の70年代半ばからバブル前の80年代前半は経済史的には「低成長時代」でした。景気の良くない時期に暗い話は求められないものです。


その流れが変わるのは83年の『おしん』から。連続ドラマ史上最高視聴率の『おしん』ですが、民放連ドラ最高視聴率も同じ83年放送の『積木くずし』。こちらも非行による家族崩壊がテーマの暗い話です。このあたりで時代が求めるものが変わってきたのでしょう。

そしてもう一つ、想像ですけど受信料対策もあると思います。

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雲のじゅうたん』放送の76年は受信料を465円から710円に。オイルショックによるインフレの影響で、約5割と比率でいうと過去最大の値上げです。その後も80年に880円、84年に940円と細かく上げています。景気の悪い時期に値上げは風当たりが強い。
批判を和らげるために、視聴率が求められ、ヒットパターンを繰り返したんじゃないでしょうか。

おしん』の企画は「暗い」となかなか通らなかったらしいですが、蓋を開けると空前絶後の大ヒット。
『おちょやん』から『おかえりモネ』で視聴率を落として「王道に戻せ」という意見をよく聞きます。しかし同じことを繰り返してもそのうち飽きられる。今後の発展を考えれば、いろいろ試してみないと。