ドラマ・クロカイブ

AllAboutドラマガイドが書ききれなかったことをつづります。

地元志向の高まりで21世紀の朝ドラヒロインは故郷に帰る


気仙沼に戻った『おかえりモネ』。

戻る前に明日美(恒松祐里)には「なんでみんな戻っちゃうんだろ?」といわれ、戻ってきても亮(永瀬廉)に「なんで帰ってきたの?」。地元のためにという理由に対し「きれいごと」とまでいわれてしまいました。

ドラマ、それも朝ドラだし、タイトルもタイトルだ。視聴者としても戻るんだろうなと思って見てました。

しかしふと朝ドラだし、ということに疑問がでてきました。そんなに朝ドラヒロイン、地元を大事にして戻ってきてたか?


記憶を引っ張り出すとともに調べて見ると、2000年以前はそういう例は見つかりません。例えば『ええにょぼ』(1993)。神戸の医大を卒業して、大学に残りたいと思っていたけど、希望に反して舞鶴の病院に配属。いやいや出身の伊根町の近くに単身赴任。最終回では関係修復した商社マンの夫とともにアメリカへ。

地元に戻ってきた、確認できるもっとも古い例は『ちゅらさん』(2001)でした。最後は小浜島に戻ります。

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それ以降は多く見られ『風のハルカ』(2005)は大阪の旅行代理店から由布院の観光組合に。
純情きらり』は東京で音楽の勉強から、幼なじみと結婚して岡崎市へ。
『だんだん』(2008)は松江から出て隠岐島へ戻るという、より人口の少ない方に行く逆Jターン。
『ウェルかめ』(2009)はあこがれの女性雑誌編集部に仮採用されるものの、あっというまに廃刊になり、徳島に逆戻り。
本放送が8時スタートになって以降は記憶に新しいところなので、タイトルだけ列挙。『純と愛』(2012)、震災関連の先輩『あまちゃん』(2013)、『まれ』(2015)、『スカーレット』(2019)。

あと地元/都会ではないけど『てるてる家族』(2003)は宝塚音楽学校を卒業するも歌劇団には入らず、実家である池田のパン屋に。兵庫県宝塚市大阪府池田市、距離も10キロぐらいしか離れていませんが、華やかな場から実家に戻るという点では共通してます。

と、いうように故郷に戻る朝ドラヒロインは、20世紀は目立たず、21世紀になって特に現代もので目立つようになりました。

 

なぜ変わったのか、理由を考えるに「若者の地元愛」が強くなったということに思い至りました。
昭和の頃は、都会に出て一旗揚げるというのが一般的な考え方でした。ところがバブル崩壊とともに、都会に出ても苦労するだけ、あまりにも地方はともかく、職とイオンモールがあるところなら、親の助けも借りて、友達と楽しく暮らそうという考えが強くなってきました。
人口密度の高い都会の方が被害が大きいコロナ禍により、その傾向はますます高まっています。

あまちゃん』でもヒロイン・アキ(能年玲奈)は地元愛のキャラで、それに対してユイ(橋本愛)は東京志向でした。ユイに影響されてアキは東京に行くけど、震災を機に地元愛が戻って北三陸に帰ります。

『おかえりモネ』は震災から8年、さらに一度地元を出てからまた戻る、と時間がかかっているから理解されにくい。モネ、直感で行動するタイプじゃなく、ドラマの2/3をかけないと気持ちの整理がつけられませんでした。