ドラマ・クロカイブ

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本格推理がテレビドラマでは難しい理由

フジテレビのアガサ・クリスティ原作・三谷幸喜脚本・野村萬斎主演のシリーズ第3弾『死との約束』が放送されました。

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アクロイド殺し』が原作のシリーズ前作『黒井戸殺し』はあの有名な原作を知らない人といっしょに鑑賞。犯行が行われたあたりを見ていると「犯人はXX?」といいあてました。演出が不自然なのでわかったとのこと。
『死との約束』は自分も知らないので、どうなんだろうと思って見ていると同じく犯行前後でわかる。犯人のセリフとか行動が不自然でおかしい。

三谷幸喜朝日新聞に連載しているエッセイ、放送直後のものによると「キャスティングで犯人がわかってしまうという問題点がある」けど重要なのは「そこに行き着くまでのプロセスなのだ」と書いてます。その意味ではたしかに優れた原作でしたが、映像化するときに犯人がわかってしまうというのは問題でしょう。


それに、俳優の格で犯人がわかると放送が終わったとはいえ、見逃し配信とかで見る人がいる放送直後に書いていいの?最近の犯人あて「考察」で盛り上がるドラマ、『あなたの番です』『テセウスの船』『天国と地獄』などは意外な俳優が犯人役なのがトレンドです。

やはり本格推理という形式がテレビドラマでは難しいんでしょう。犯人がキャスティングでわかってしまうのなら『刑事コロンボ』がヒットさせ『古畑任三郎』も踏襲した犯人が最初からわかっている倒叙形式の方があっています。

ところで『古畑任三郎』が放送されている頃から思っていましたが、トリックを重視したミステリードラマをつくるなら、脚本家がトリックを考えるんじゃなくて、若手ミステリー作家などにアイデアを出してもらって脚本家はそれをまとめた方がいいと思います。

4/11スタートの日本テレビ系日曜ドラマ、広瀬すず櫻井翔主演『ネメシス』がその形式を採用したようです。期待しましょう

eiga.com

最後に、本格推理ドラマの傑作を紹介。『安楽椅子探偵』シリーズ、1999年から2017年まで数年おきに放送され全8作です。

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原作は綾辻行人有栖川有栖共同執筆の書き下ろし。脚本は『相棒』から現在は『科捜研の女』メインライターの戸田山雅司。前後編で前編が問題編、翌週に解決編。視聴者からの解答を募って「最もエレガントな解答」を当選とするもの。

変わっているのが探偵で、前編の最後に笛により呼び出される白い仮面の男・その名も安楽椅子探偵。関係者を現実から切り離された「純粋推理空間」(真っ白のスタジオ)に集め、問題編の映像を自由に映し出し犯人を導き出します。推理は論理的なのに、存在は超常的な謎の探偵です。

大阪朝日放送制作のローカル放送で全国では知られていませんが、TVerがあるいまならもっと盛り上がるでしょうから、復活しませんかね。逆に盛り上がりすぎて解答が殺到すると処理できなくなるから、そのために終了したのかもしれませんが。