ドラマ・クロカイブ

AllAboutドラマガイドが書ききれなかったことをつづります。

新国立競技場で増えた?ドラマの中の建築士

秋ドラマは終盤になって、にわかに建築士が注目されました。

まずは『恋する母たち』。石渡杏(木村佳乃)の交際相手、斉木巧(小泉孝太郎)は昔は建設会社に勤めていたが、妻の駆け落ち後、週刊誌編集部に転職。しかし12月11日放送の第8話でやっぱり建築士を目指すと同級生の建築事務所に入る。翌週の最終回で試験に合格、独立して事務所を設立。一度は離婚した杏を秘書にするハッピーエンド。

12月12日には『35歳の少女』の最終回。ハウスメーカーをクビになって失業中だったヒロインの父(田中哲司)が、子どものころからの夢だった建築士を目指して勉強を始めます。

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勉強中の『35歳の少女』はともかく、『恋する母たち』を見て疑問なのは、一級建築士に合格したからといっていきなり独立して儲かるのか?

その疑問に答えてくれたのが12月12・19日に前後編で放送されたNHK土曜ドラマノースライト』。主人公の青瀬(西島秀俊)は大手建築事務所に勤めていたがバブル崩壊後にクビになって路頭に迷い、なんとか大学の同期だった岡島(北村一輝)の建築事務所に拾われる。吉野陶太(伊藤淳史)から「あなた自身が住みたい家を建てて下さい」と依頼されてつくったY邸により建築士として評価されたが、そのY邸に吉野は住んでいなかった、というのが物語の発端でした。
やっぱり建築士になったからといって、そんなに簡単に成功するわけじゃない。

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柴門ふみ原作の『恋する母たち』はわかりませんが、『35歳の少女』の遊川和彦脚本作品にはよく建築系の仕事がでてきます。『家政婦のミタ』で派遣先の父親、阿須田恵一(長谷川博己)はハウスメーカー勤務。『はじめまして、愛しています。』の梅田信次(江口洋介)は不動産管理会社勤務。『同期のサクラ』は舞台が大手ゼネコン。

他に最近の建築士が主要登場人物になるドラマというと松坂桃李山本美月の『パーフェクトワールド』、コーポラティブハウスを設計した建築士(眞島秀和)が自らも住んだ『隣の家族は青く見える』、変人建築士が主人公の『まだ結婚できない男』が思い浮かび、近年なんとなく増えているような。

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要因として、ホームドラマが多いテレビドラマと、家そのものをたてる建築はそもそも親和性が高いのに加えて、2015年「新国立競技場建替計画変更問題」の影響で建築士、建築家に対する注目が高まっていることが考えられます。

そういえば新国立競技場計画変更後の設計を担当した隈研吾、初期の代表作のドーリック南青山ビルやM2ビルがバブルの象徴扱いされ、2つの大震災を経て木材など自然素材を多用する建築に変わりました。

ノースライト』の主人公も若い頃は「コンクリートとガラスと鉄」を使うのが好きで、自分の家を建てる計画も木造にしたい元妻と意見が合わずお流れに。しかし成功したY邸は木造建築。それが建築の大きな流れなんでしょうが、現実とドラマで重なります。

 

最後に建築士が主人公で最もヒットしたドラマを紹介。TBS金曜ドラマ『協奏曲』(1996)です。
著名な建築家とその下で働き、やがて頭角をあらわす若き建築家の二人が主人公。それを演じるのが田村正和木村拓哉。1クールタイプの連続ドラマの主演男優(つまり藤田まことや水谷豊などを除く)としては歴代一二を争うであろう二人のダブル主演。間に立つヒロインには『ノースライト』でも主人公の元妻を演じた宮沢りえ
この三人の名前だけでヒットは間違いなし。ただ第一話が最高視聴率で最終話が最低視聴率の右肩下がり。脚本が池端俊策で渋い大人向けのドラマを得意としますが、視聴率をとるタイプじゃなく、内容が世間の期待からは違ったようです。
放送中の大河ドラマ麒麟がくる』も池端俊策がメイン脚本ですが、やっぱり視聴率下がってます。

内容がよければそれでいいのだ。ぼくは好きです。

 

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