ドラマ・クロカイブ

AllAboutドラマガイドが書ききれなかったことをつづります。

朝ドラ1996〜2000:現代的要素を取り入れて方向転換完了

『青春家族』で現代路線の方向性が出ながら、なかなか変われなかった朝ドラ。ようやく方向転換できたのは1996年『ひまわり』『ふたりっ子』の連続ヒットから。

 

要因は脚本家の若返り。これまではベテランから中堅どころが担当していました。しかし上期『ひまわり』の脚本、井上由美子は放送当時34才。朝ドラを担当した脚本家としてはその時点でたぶん一番若い(その後『こころ』の梅田みかが32才で更新、ただし生年が確認できない人もいるのであくまでたぶん)。実績としてもNHK大阪制作、藤山直美主演の『この指とまれ』やBSサスペンス『天上の青』『照柿』など評価されていましたが、一般的にはあまり知られていませんでした。

下期『ふたりっ子』の脚本は大石静。『長男の嫁』など民放で活躍していましたが、NHKは初めて。実績重視のNHKが最初から朝ドラをまかせるというのは当時としてはめずらしい。

脚本家が若返るということは、いっしょに仕事をするスタッフも若返っているはず、そうじゃないとコミュニケーションがうまくいかない。

 

『ひまわり』は『青春家族』『ひらり』からくる現代路線を職業ものとして完成させてこの後のスタンダードになったような印象。それに2週間を1エピソードとしてサブタイトルをつけるのは初めて(1週間単位になったのは『あぐり』から)。全13エピソードで民放の連ドラが10回前後なのに合わせる意図がありました。

 

ふたりっ子』は三倉茉奈・佳奈人気が火付け役になり大ヒット。この後しばらく、最初は子役から入るパターンが多用されます。妹・香子(岩崎ひろみ)は猪突猛進型で朝ドラヒロインの一つの定形ですが、姉・麗子(菊池麻衣子)を上昇志向な悪女にしたのはダブルヒロインのうまい使い方。

 

また以前は時代の大きな苦難というと関東大震災と太平洋戦争でしたが、この時期の大阪制作では、バブル崩壊阪神大震災になっています。『ふたりっ子豆腐屋、『甘辛しゃん』日本酒、『やんちゃくれ』造船、『あすか』和菓子、『オードリー』時代劇と当時の斜陽産業が舞台で不況の影響も深刻。東京一極集中化の影響でしょうか。

 

また『ふたりっ子』は離婚、『私の青空』はシングルマザー、『オードリー』はアラフィフとなる最終回まで独身のままと大石静内館牧子脚本作品でひとりで生きるヒロインが登場するのも時代でしょうか。

 

ともあれこの時期、戦前からの一代記パターンは『あぐり』と『すずらん』だけで現代路線が定着。視聴率低下に歯止めは打てました。ただしそれ以前の30%超の数字はもどってきません。