ドラマ・クロカイブ

AllAboutドラマガイドが書ききれなかったことをつづります。

第二次将棋ドラマ黄金時代はちょっと違う

4/18放送の『緊急取調室』と4/24放送の『特捜9』のテレ朝刑事ドラマで相次いで将棋界が舞台になりました。モデルになったのは、『緊急取調室』はニコニコ動画ドワンゴ叡王戦を主催するなど新スポンサーが相次いでいること、『特捜9』は将棋ソフト不正使用疑惑騒動でした。
2月にはBSプレミアムで『盤上のアルファ』がドラマ化。こちらのモデルは三段リーグ編入試験。藤井聡太七段を筆頭に将棋界が盛り上がっています。

昔から思っているのですが将棋をテーマにしたドラマはだいたいおもしろい。古典は坂田三吉がモデルで舞台から映画、村田英雄の歌にもなった『王将』でしょうか、テレビドラマにもなっています。それ以降のテレビドラマでの流れを振り返ってみました。

タイトル 原作/脚本 主な出演
1971〜1972 天下御免 早坂暁脚本 山口崇
1981 煙が目にしみる ジェームス三木脚本 川谷拓三、根岸季衣
1996〜1997 ふたりっ子 大石静脚本 岩崎ひろみ菊池麻衣子
2000 月下の棋士 コミック原作 森田剛
2001 聖の青春 ノンフィクション小説 藤原竜也
2008 ハチワンダイバー コミック原作 溝端淳平
2017 将棋めし コミック原作 内田理央上遠野太洸稲葉友
2018 この恋はツミなのか コミック原作 柏木由紀伊藤健太郎
2019 盤上のアルファ 小説原作 玉木宏上地雄輔


伝説のドラマ『天下御免』は、その中の第33話「なぜだか銀は泣いている」。徳川家康囲碁・将棋好きだったため、江戸時代、名人は幕府から認められた役職で世襲制。その不条理に対し市井の将棋指しが挑戦するが……結末の鮮やかさが印象的な一編。『天下御免』、映像はほとんど残ってませんが、この回の音声だけはYoutubeにあります。

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『煙が目にしみる』は奨励会三段で定年目前の崖っぷちの主人公とドサ回りのフラメンコダンサーとのラブストーリー。将棋好きのジェームス三木脚本で奨励会の定年という将棋ものの定番パターンを確立。
ジェームス三木作品はサービス精神あふれるエンターテイメント性に目を奪われがちですが、売れない歌手としての苦労から下積みの苦労やコンプレックスを持った人に対してのやさしい視点がいいところだとおもいます。そんな美点が強く出たのがこの『煙が目にしみる』と同じ主演コンビ(東映の大部屋で下積みが長かった川谷拓三とコンプレックスが大きなテーマのつかこうへい事務所出身の根岸季衣)の前作『愛さずにはいられない』(定時制高校に通う大工と結婚詐欺にあい地元にいられなくなった女教師のラブストーリー)でした。ジェームス三木はこの路線で注目されて朝ドラ『澪つくし』、大河『独眼竜政宗』につながります。

朝ドラ『ふたりっ子』はいうまでもなし。最終回にゲスト出演した羽生7冠(当時)全盛期を背景として、第一次将棋ドラマ黄金時代を切り開きました。

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月下の棋士』は『イグアナの娘』『ガラスの仮面』などを生んだテレビ朝日系月曜ドラマインの最終作で、過激なキャラクターぞろいなのが月曜ドラマ・インらしい。
『聖の青春』は早逝した村山聖九段が題材。亡くなったのが98年、原作出版が2000年でその直後にドラマ化で2016年の松山ケンイチ主演映画よりだいぶ早い。制作は広島出身の村山九段の地元、TBS系のRCC中国放送テレビマンユニオンでしっかりしたドラマでした。

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ハチワンダイバー』は『月下の棋士』と同じくコミック原作らしい強烈なキャラクター
がたくさん出てきますが、その中でも仲里依紗が演じた、主人公を導く巨乳メイドの真剣師が記憶に残ります。

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ここまでは「将棋ドラマにはずれなし」と思っていたのですが、近年ちょっと変わってきました。『将棋めし』は勝負じゃなく対局中の食事が主題、『この恋はツミなのか』は女流棋士の恋愛がメインで、これまでの将棋ドラマにあった勝負に対するシリアスさがなく、はっきりいってチャラい。
『盤上のアルファ』はシリアス作ですが、NHKBSプレミアムの放送でマイナーだったということもあり、あまり話題にならず。

この流れの最初はドラマ版はないけど『3月のライオン』でしょうか。原作コミックとアニメ版はヒットしたものの2017年、神木隆之介主演の映画版は大ヒットの期待がかけられながら、まさかの大コケ。

量は増えて「第二次将棋ドラマ黄金時代」という感じですが、求められる内容が変わってきているのかもしれません。