ドラマ・クロカイブ

AllAboutドラマガイドが書ききれなかったことをつづります。

『やすらぎの郷』と昭和の音楽バラエティ

やすらぎの郷』で新登場、かつての敏腕プロデューサー石上五郎(津川雅彦)。ハワイにいたということは、モデルは『ゲバゲバ90分』などで知られる元日本テレビ井原高忠ですね。『11PM』も企画、大橋巨泉の「セミリタイヤ」は日本テレビを51才でやめて、ハワイで地元ラジオ局を手伝っていた井原がお手本だといわれています。

そして及川しのぶ(有馬稲子)の伝説の番組『しのぶの庭』を復活させる、という構想が飛び出してきて、それはつまり草笛光子の『光子の窓』。井原が放送中にアメリカに視察に行き、帰国してアメリカで得たことをを反映してガラッと現代的に変わったことで知られる伝説の音楽バラエティです。

有馬稲子が『やすらぎの郷』に出演しているのはたぶん、ケア付きマンションに住んでいることを公言しているリアル感なんだろうけど、歌手・及川しのぶというのがよくわからなかった。草笛光子をイメージしていた役だったのね。
そして、実際の草笛光子が出てこないのはなんとなくわかる。元気そうで『やすらぎの郷』に入居してそうにないから。

光子の窓』の構成作家の一人に永六輔がいたけど、安保デモに参加して締切をしばしば破ったため降板。永六輔はその後、NHKで『夢であいましょう』に参加し『光子の窓』のノウハウが流れました。『夢であいましょう』は昨年の『トットてれび』で取り上げられています。
テレビ創成期から活躍している女性というと、ラジオ時代から子役で活躍していた中村メイコNHK放送劇団出身の黒柳徹子が有名だけど(『徹子の部屋』の記念企画「昭和の大スター名場面スペシャル」で中村メイコがゲストでいっしょに名場面を見ていました)、この二人はNHKメイン。同じ年に放送開始した日本テレビサイドでは草笛光子を推したい。この三人、現時点でみんな83才(中村メイコが学年で一つ若いけど、本名・五月、芸名・メイコの5月生まれだから追いついた)です。

草笛光子芥川也寸志と結婚したからか永六輔の件でスポンサーの資生堂の不興を買ったかから『光子の窓』が終了。その後『スタジオNo.1』をはさんで制作されたのが『あなたとよしえ』。「よしえ」は水谷良重、現・二代目水谷八重子。これに出演していたのが藤木孝藤木孝は歌手としてデビューして「ツイスト男」として大ブレイクするものの、本当は俳優をやりたかったと渡辺プロをやめて俳優に転身。当時の渡辺プロは人気者がたくさんいて、渡辺プロ抜きでは音楽番組ができないほどで、絶大な力を持っていました。渡辺プロの逆鱗に触れた藤木は干されてしまったけど、井原はそれに反して起用。

井原は後に局次長に昇進して日本テレビの音楽番組を統括。オーディション番組『スター誕生』を始め、歌手を育てて歌番組『紅白歌のベストテン』に出演させるという流れをつくりました。しかし渡辺プロがNET(現・テレビ朝日)と組んで『紅白歌のベストテン』の裏番組でオーディション番組を開始。このことから日本テレビと渡辺プロが全面戦争状態となり、『スター誕生』の合格者をホリプロなど他にまわして他の芸能プロを育成、渡辺プロ一強体制を崩したのでした。
日本テレビは『世界の果てまでイッテQ!』のイモトアヤコ、最近ではみやぞんなど番組から人気者を生み出す気風が残っています。

話を藤木孝に戻すと、俳優になって最初に所属したのは「にんじんくらぶ」。ここは岸恵子久我美子有馬稲子の三女優が映画会社にこだわらない仕事をしたいと立ち上げた独立映画製作プロダクション。これで有馬稲子とつながった。
そんなつながりを考えながら『やすらぎの郷』を見るとさらに味わい深いものがあります。