ドラマ・クロカイブ

AllAboutドラマガイドが書ききれなかったことをつづります。

24時間テレビのマラソンはMCの代わりにヘロヘロになる

毎年「24時間テレビでなぜマラソンをするのか」という疑問がよくでてきます。その理由については以前まとめていて、かなり自信をもっています。

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しかし自信の割には世間に広まってない。別のことのついでに書いたのがいけなかった、と反省し、独立した記事にします。

ということで結論はタイトルに書いた。24時間テレビ、そもそもはMCがヘロヘロになるものでした。『24時間テレビ 愛は地球を救う』が始まった1978年、総合司会は萩本欽一で終盤はかなり疲れていました。出突っ張りなら当然疲れていきます。普通の番組ではみられない、長時間テレビの見どころだと思います。

ところが最近の長時間テレビは適度に休めるようにしているからか、最後までMCが元気です。いつ頃から疲れなくなったのか?記憶をたどると90年代初めぐらいに行き当たりました。

TBSが1992年に長時間テレビに挑戦。年末12月30~31日に『元旦まで感動生放送!史上最大39時間テレビ ずっとあなたに見てほしい 年末年始は眠らない』を放送。しかし全体に盛り上がらず、さんざんなデキでした。総合司会の筑紫哲也、放送開始時は「この企画は21世紀まで続けます」といっていましたが、締めの挨拶では「21世紀まで続けるとTBSはいっています」と暗に「自分はもうしない」と匂わせていました(記憶なのでいった言葉の詳細は違っているかもしれません)。

そしてその反省か、翌1993年には大幅に企画を変えて『関口宏の報道30時間テレビ』で報道メインに。これを見ていて「関口宏が最後まで元気だ」と違和感を持った記憶があります。報道なんだから疲れてなくてもいいんでしょうけど。

そして『24時間テレビ 愛は地球を救う』のチャリティーマラソンが始まったのは相前後して1992年から。最初はウルトラマラソンを得意とする間寛平ありきの企画だったのでしょうが、好評により毎年ランナーを変えて24時間テレビの柱に。MCや中心となるタレントが疲れる代わりにヘロヘロな姿を見せるために定着したんじゃないかと思います。

ちなみに24時間テレビを立ち上げた都築忠彦プロデューサーが1991年で現場を離れて子会社社長に。1992年はメインはダウンタウン、テーマは「愛の歌声は地球を救う」で番組中で「サライ」をつくるなど大幅刷新し、今に至る路線に転換しました。

9月8,9日はフジ系27時間テレビですが、昨年から生放送でさえなくなってしまいました。昨年はまだバカリズム脚本のドラマが三本あり、それをキーにしてそこそこ見ましたが、今年は……

医聖・曲直瀬道三と「蘭学事始」杉田玄白と坂本九

Amazon.co.jp: 曲直瀬道三 乱世を医やす人 という小説が出版されて、小説は読んでないけど紹介記事を読みました。

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信長、秀吉を診察し、自分で薬を調合するなど健康マニアだった家康に医術を授けた戦国期の名医。その功績は、診察し、病名を判断し、薬を処方する、今につながる医療スタイルを日本で初めて確立したことだそうです。

 

それで曲直瀬という姓にピンときたのは「マナセプロの曲直瀬さん?」
テレビ時代初期に覇権を握った芸能事務所・渡辺プロ。その創業者が渡辺晋で、二人三脚でもり立てたのが妻・渡辺美佐。その実家が曲直瀬家でこちらも芸能プロをやっていました。全盛期の主要メンバー坂本九水原弘、森山加代子、九重佑三子、ジェリー藤尾。現在は西田ひかるが所属しています。

調べるとたしかにマナセプロの曲直瀬家の祖先が曲直瀬道三でした。さらにわかったのは別の歴史上の人物にもつながること。マナセプロ創業者・曲直瀬正雄の母が曲直瀬家、父は山鹿家で、祖先は山鹿素行大石内蔵助にも教えた赤穂藩軍学者儒学者赤穂浪士がその兵法を使ったことで有名です。

マナセプロを代表するタレントといえば坂本九御巣鷹山日航機事故から33年、まだ事務所サイトでは所属タレントとしています。テレビドラマで有名なのは平賀源内(山口崇)を主人公に破天荒な時代劇として有名な『天下御免』の杉田玄白役。


「『天下御免』はぼくの原点」という三谷幸喜が今年の正月時代劇『風雲児たち蘭学革命篇〜』の脚本を書いています。前野良沢(片岡愛之助)と杉田玄白(新納慎也)がオランダの「ターヘル・アナトミア」を翻訳し「解体新書」を出版するはなし。


日本の医療に新たに「蘭学」を持ち込み、曲直瀬道三からの路線に変革をもたらしたわけですが、坂本九、マナセプロからの関係もあったんですね。

『透明なゆりかご』ヒロインは半分じゃなく二倍、青い。

産婦人科医院が舞台の『透明なゆりかご』。妊娠中絶やDVなど産婦人科の影の部分も描くというシリアスな作品で夏ドラマで抜群のデキ。

その割には看護師見習いの主人公(清原果耶)は、母子手帳を返し忘れて発進する車の前に飛び出すというあたりはオッチョコチョイだとしても、事情があってやたらと怒る妊婦(田畑智子)への怖がり方や、事情がわかってなんとかしようとやたらとつきまとうあたりの行動がなんかおかしい。原作がコミックだからか?と調べてみました。

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原作コミックは作者・沖田X華の実体験を元にして主人公の名前もX華。それで原作者は『毎日やらかしてます。アスペルガーで、漫画家で』という作品もあり、アスペルガー学習障害、注意欠陥多動障害といった発達障害と診断されているとのこと。ドラマでは母親(酒井若菜)にこどものころきつくあたられた描写があったり、ホームページの登場人物紹介に「不器用でコミュニケーション下手」と書かれていますが、そういう背景があったのか。

そして、フジテレビの『グッド・ドクター』の主人公(山崎賢人)は自閉症スペクトラム障害サヴァン症候群の小児外科医。夏ドラマで2つある病院ものには共通点がありました。今の医療の問題をコミュニケーションという面から見るということなんでしょうか。

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『透明なゆりかご』第4話「産科危機」は母体死亡がテーマで、メインゲストは残された夫役の葉山奨之。清原果耶とはドラマ版『セトウツミ』で共演しています。
サッカー部を辞めてヒマしてる天然の瀬戸(葉山奨之)と塾に行くまでの時間をつぶしてるクールな内海(高杉真宙)の大阪の男子高校生二人が毎日河原で話をするのがほとんど。「大阪人が二人で話していると漫才になる」ということを証明する作品です。瀬戸は樫村一期(清原果耶)が好きだけど、彼女は内海が好きという三角関係がありました。
池松壮亮菅田将暉中条あやみで映画化もされましたが、こういう素材は深夜ドラマ向きです。淡々としているようにみえて、不穏な最終回に向けての着々と伏線を張っているのも見もののオススメ作です。

 

ところでドラマのヒロインの名前は青田アオイで『半分、青い。』ならぬ二倍、青い。
ドラマ中では両親が離婚して母親の旧姓に変わったからだという説明がありました。しかし原作者ペンネームが沖田X華(おきたばっか)、起きたばっかりに由来するダジャレに対応してたり、それに「青二才」も引っ掛けているような気もします。

なぜ長崎?だから長崎

前記事「『半分、青い。』岐阜カツ丼の多様性がつくし食堂を救った」で

出身地のヒット作があるのは長崎ものが多かった市川森一とこのほど半自伝的ドラマ『花へんろ』が復活する早坂暁ぐらい。巨匠レベルしか思い浮かびません。

と書きました。亡くなって長崎や愛媛が舞台のドラマはあまり見なくなるのかと思いましたがそうでもない。


早坂暁は昨年末亡くなりましたが、準備していた『花へんろ特別編 春子の人形』が最後の作品として放送。2011年の市川森一死去からも入れ替わるように長崎舞台で印象的なドラマがNHKで増えています。

まずは2012年の『かすていら』。長崎を代表するアーティスト・さだまさしの自伝的小説が原作で少年時代と家族を描いてます。

 

続いて2013年1〜3月放送の『書店員ミチルの身の上話』。長崎の本屋に勤務の古川ミチル(戸田恵梨香)は恋人(柄本佑)がいるのに東京の出版社営業マン(新井浩文)と不倫して一緒に東京に。すぐに帰るつもりだったが飛行機に乗り遅れ、さらに頼まれて買っていた宝くじが2億円の大当たりで……と思わぬ運命をたどるドラマ。妹役が波瑠で、個人的にはこの直前に『相棒』元日スペシャル「アリス」と続けて見て、注目しはじめました。また同僚で親友役に安藤サクラ、原作の佐藤正午(佐世保出身で現在も在住)は2017年に直木賞受賞、と内容もさることながら後から出世した人が多いのも特徴。

 

2015年の『だから荒野』は専業主婦の森村朋美(鈴木京香)は家族に顧みられないことから家出。自家用車を持ち出しひたすら西へ向かう。途中で車を乗り逃げされるものの長崎原爆の語り部(品川徹)とボランティア(高橋一生)に助けられ長崎へ。かつて原爆により荒野と化した長崎で人々めぐりあう中、朋美は心の中にある「荒野」の存在に気づく。高橋一生がブレイクしたのはこの作品の半年後の『民王』から。ブレイク前をしらない高橋一生ファンに特におすすめです。

2016年は鎌田敏夫オリジナル脚本の『逃げる女』。西脇梨江子(水野美紀)は長崎の養護施設の職員だったが、親友・あずみ(田畑智子)の裏切りにより児童殺しの犯人とされ8年服役した後、再審が認められ釈放。あずみを追って裏切った理由を知る旅にでるが、謎の女(仲里依紗)につきまとわられて……佐世保から平戸、松浦とロケ。仲里依紗の切れた演技がみものです。

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なぜ長崎なのか?火付け役は長崎市出身の吉田修一原作『悪人』だと思います。新聞連載が2006年で2007年に出版、妻夫木聡深津絵里の映画が2010年公開。

また『だから荒野』の原作者、桐野夏生が「東日本大震災を意識」して書いたといっています。心理的に意識が西へ向かうが、行き着いた先の長崎にはかつて原爆が落ちていた、ということでしょうか。
それに「潜伏キリシタン」が世界遺産登録運動があって今年決定したという要素もあります。

昨年、長崎に旅行にいってきました。隠れキリシタンものを求めて、長崎市から平戸、隣の生月島まで。塩俵の断崖まで行き、片平なぎさ船越英一郎がいそうな見事な崖に、最果てを感じ、納得して帰宅の途につきました。

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『半分、青い。』岐阜カツ丼の多様性がつくし食堂を救った

半分、青い。』を見ていて不満だったのが岐阜らしさが少ないこと。ことばと五平餅ぐらいで、それ以外はどこかの山の町という感じ。

理由はたぶん岐阜県出身の北川悦吏子が脚本を書いているから。自分の地元は当たり前過ぎて新しい発見はしにくい。『あまちゃん』のクドカンみたいによそ者じゃないと「じぇじぇじぇ」を発掘したり、まべぶ汁を「甘いんだかしょっぱいんだかわからない」とはイジれません。
朝ドラの歴史を考えても首都圏や関西など人口の多いところを除いて、出身地を舞台に書いた脚本家というのは記憶にありません。テレビドラマ全体に広げても、出身地のヒット作があるのは長崎ものが多かった市川森一とこのほど半自伝的ドラマ『花へんろ』が復活する早坂暁ぐらい。巨匠レベルしか思い浮かびません。

さてそんな状況でしたが、新たな岐阜らしいものがでてきました。つくし食堂を復活させた草太のカツ丼です。あまり広くは知られていませんが岐阜県南部の美濃地方は一般的な卵とじカツ丼とは違ったスタイルのカツ丼が多い。下記のリンクがよくまとまっています。

style.nikkei.com

 

草太のカツ丼、あんかけとかふわふわメレンゲとか目玉焼きをのせるとかリンク先で紹介されているカツ丼の要素を組み合わせている感じ。東海地方で好まれる中濃ソースをかけているのがオリジナル要素でしょうか。

しかし他にも織り込める岐阜らしさはあると思いますね。例えば伝説の元祖野外フェス「中津川フォークジャンボリー」。最後の第三回は1971年8月7日からの開催で、鈴愛と律の誕生日の一ヶ月後。これにからめて仙吉(中村雅俊)が戦争について語る、というのはあまりに『ひよっこ』のビートルズ来日公演と同じでしょうか?

山田孝之・菅田将暉『dele』は『傷だらけの天使』『探偵物語』の味わい

テレビ朝日系『dele』は期待通りにおもしろいですね。舞台は故人のデジタル情報を削除する事務所。真柴(菅田将暉)が依頼者の死亡確認をするなかで故人の人生や秘密に触れ、車椅子の坂上所長(山田)が情報を抹消してきます。山田孝之菅田将暉の組み合わせでもう十分という感じですが、実際できたものを見ると『傷だらけの天使』『探偵物語』の70年代日本テレビアクションドラマの味わいがあります。

dele.life

それぞれ伝説のドラマである『傷だらけの天使』と『探偵物語』。ファンが多くて、その雰囲気を復活させようという動きは定期的にありましたが、以前はあまりうまくいっていませんでした。
例えば永瀬正敏主演の『私立探偵濱マイク』。1994〜1996年に三作映画化され2002年にTVシリーズに。映画はおいといてTVシリーズの方は個人的にはあまり感心せず。

ところが2010年代に入って風向きが変わってきます。キッカケは三浦しをん直木賞受賞作が原作の瑛太松田龍平主演『まほろ駅前』シリーズ。優作長男の龍平をつかってくるところで狙っています。
映画版の『まほろ駅前多田便利軒』と『まほろ駅前狂騒曲』はイマイチでしたが、TVシリーズまほろ駅前番外地』はよかった。『モテキ』『バクマン』などの大根仁演出で原作にないオリジナルエピソードを入れて楽しめました。

www.tv-tokyo.co.jp

これに刺激されたのかこの路線の作品が量が増加。ただ玉石混交で、優作次男の松田翔太主演の『潜入探偵トカゲ』はおもしろくなかった。大根演出で期待されたオダギリジョー主演の『リバーズエッジ大川端探偵社』は悪くはないけどやや盛り上がりには欠けた。大泉洋主演の映画『探偵はBARにいる』シリーズもこの流れでしょうね。

以前うまく行っていなかったときは、時代背景が違うんだからおもしろくはならないんだろうと思っていました。しかしこ10年代に入ってのこの盛り上がり。世間はバブル前後の80年代後半から90年代前半あたりをなつかしんでいるようですが、案外70年代と似た時代なのかもしれません。

田中圭がブレイクしたのは小出恵介が休業したからじゃない

明石家さんま企画・プロデュースでジミー大西の半生を描くNetflixオリジナル連ドラ『immy ~アホみたいなホンマの話~』。明石家さんま役で出演予定だった小出恵介の不祥事により制作が遅れていましたが、玉山鉄二で撮り直し、めでたく配信開始されました。
玉山鉄二は代役なのかと思ったら、そもそも小出恵介より前に玉山鉄二にオファーしたけど断っていた。しかしあんなことになって「俺の責任だ」と代役を申し出た、というめずらしい事例です。

小出恵介とポジションとか雰囲気が似ているとよくいわれていたのが田中圭。ふつうの30前後のいい人イメージで小出恵介の方がやや二枚目よりか。
求められる役柄が似ているのは朝ドラ『おひさま』と一年後の『梅ちゃん先生』を見るとわかります。どちらもヒロインの兄で戦時下の医学生役。『おひさま』須藤春樹(田中圭)は軍医として出征し戦死。『梅ちゃん先生』下村竹夫(小出恵介)は敗戦により医者になることに疑問を感じ家出。田中圭小出恵介を逆にしても違和感はないと思います。

小出恵介が芸能活動を休止して、田中圭の仕事が増えたからということではないでしょうが(それ以前からドラマ出演は十分多い)、『おっさんずラブ』主演で田中圭がブレイク。7月からも『健康的で文化的な最低限度の生活』に上司役で出演し好調をキープしています。

そんな田中圭、ブレイク前の作品でおすすめなのが『ノーコン・キッド〜ぼくらのゲーム史〜』。2013年、ファミコン発売から30周年の年の制作で主人公たちの人生とゼビウス、マリオ、ドラクエバーチャファイター2など大ヒットしたゲームをリンクして描くという趣向。

主人公・渡辺礼治(田中圭)は家業がゲーセンの普通の男。ヒロイン・高野文美(波瑠)はサブカル女(役名はたぶん高野文子から)で女性雑誌編集者に。木戸明信(浜野謙太)は伝説のゲーマーからプログラミング会社社長に。
普通力を存分に活かした田中圭、『あさが来た』でブレイクする二年前でまだクールキャラだった波瑠、いかにもオタクな浜野謙太とそれぞれの持ち味を発揮。さらに三人とも15〜45歳まで演じてそんなに違和感がないところがみもの。

個人的にはゲームはほとんどしない(画面はテレビドラマを見るためにあると思っているから)のですが、それでも楽しめる作品です。

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