ドラマ・クロカイブ

AllAboutドラマガイドが書ききれなかったことをつづります。

山田孝之・菅田将暉『dele』は『傷だらけの天使』『探偵物語』の味わい

テレビ朝日系『dele』は期待通りにおもしろいですね。舞台は故人のデジタル情報を削除する事務所。真柴(菅田将暉)が依頼者の死亡確認をするなかで故人の人生や秘密に触れ、車椅子の坂上所長(山田)が情報を抹消してきます。山田孝之菅田将暉の組み合わせでもう十分という感じですが、実際できたものを見ると『傷だらけの天使』『探偵物語』の70年代日本テレビアクションドラマの味わいがあります。

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それぞれ伝説のドラマである『傷だらけの天使』と『探偵物語』。ファンが多くて、その雰囲気を復活させようという動きは定期的にありましたが、以前はあまりうまくいっていませんでした。
例えば永瀬正敏主演の『私立探偵濱マイク』。1994〜1996年に三作映画化され2002年にTVシリーズに。映画はおいといてTVシリーズの方は個人的にはあまり感心せず。

ところが2010年代に入って風向きが変わってきます。キッカケは三浦しをん直木賞受賞作が原作の瑛太松田龍平主演『まほろ駅前』シリーズ。優作長男の龍平をつかってくるところで狙っています。
映画版の『まほろ駅前多田便利軒』と『まほろ駅前狂騒曲』はイマイチでしたが、TVシリーズまほろ駅前番外地』はよかった。『モテキ』『バクマン』などの大根仁演出で原作にないオリジナルエピソードを入れて楽しめました。

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これに刺激されたのかこの路線の作品が量が増加。ただ玉石混交で、優作次男の松田翔太主演の『潜入探偵トカゲ』はおもしろくなかった。大根演出で期待されたオダギリジョー主演の『リバーズエッジ大川端探偵社』は悪くはないけどやや盛り上がりには欠けた。大泉洋主演の映画『探偵はBARにいる』シリーズもこの流れでしょうね。

以前うまく行っていなかったときは、時代背景が違うんだからおもしろくはならないんだろうと思っていました。しかしこ10年代に入ってのこの盛り上がり。世間はバブル前後の80年代後半から90年代前半あたりをなつかしんでいるようですが、案外70年代と似た時代なのかもしれません。

田中圭がブレイクしたのは小出恵介が休業したからじゃない

明石家さんま企画・プロデュースでジミー大西の半生を描くNetflixオリジナル連ドラ『immy ~アホみたいなホンマの話~』。明石家さんま役で出演予定だった小出恵介の不祥事により制作が遅れていましたが、玉山鉄二で撮り直し、めでたく配信開始されました。
玉山鉄二は代役なのかと思ったら、そもそも小出恵介より前に玉山鉄二にオファーしたけど断っていた。しかしあんなことになって「俺の責任だ」と代役を申し出た、というめずらしい事例です。

小出恵介とポジションとか雰囲気が似ているとよくいわれていたのが田中圭。ふつうの30前後のいい人イメージで小出恵介の方がやや二枚目よりか。
求められる役柄が似ているのは朝ドラ『おひさま』と一年後の『梅ちゃん先生』を見るとわかります。どちらもヒロインの兄で戦時下の医学生役。『おひさま』須藤春樹(田中圭)は軍医として出征し戦死。『梅ちゃん先生』下村竹夫(小出恵介)は敗戦により医者になることに疑問を感じ家出。田中圭小出恵介を逆にしても違和感はないと思います。

小出恵介が芸能活動を休止して、田中圭の仕事が増えたからということではないでしょうが(それ以前からドラマ出演は十分多い)、『おっさんずラブ』主演で田中圭がブレイク。7月からも『健康的で文化的な最低限度の生活』に上司役で出演し好調をキープしています。

そんな田中圭、ブレイク前の作品でおすすめなのが『ノーコン・キッド〜ぼくらのゲーム史〜』。2013年、ファミコン発売から30周年の年の制作で主人公たちの人生とゼビウス、マリオ、ドラクエバーチャファイター2など大ヒットしたゲームをリンクして描くという趣向。

主人公・渡辺礼治(田中圭)は家業がゲーセンの普通の男。ヒロイン・高野文美(波瑠)はサブカル女(役名はたぶん高野文子から)で女性雑誌編集者に。木戸明信(浜野謙太)は伝説のゲーマーからプログラミング会社社長に。
普通力を存分に活かした田中圭、『あさが来た』でブレイクする二年前でまだクールキャラだった波瑠、いかにもオタクな浜野謙太とそれぞれの持ち味を発揮。さらに三人とも15〜45歳まで演じてそんなに違和感がないところがみもの。

個人的にはゲームはほとんどしない(画面はテレビドラマを見るためにあると思っているから)のですが、それでも楽しめる作品です。

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野島伸司は『てるてる家族』を見たか

日本テレビ系水曜ドラマ『高嶺の花』、主題歌がプレスリーの「ラブ・ミー・テンダー」で第一話劇中でも直人(峯田和伸)がカラオケで歌い、もも(石原さとみ)が「あっ、この歌好き」とのセリフがありました。石原さとみ、そりゃ「ラブ・ミー・テンダー」好きだろう、と石原さとみの朝ドラヒロイン作『てるてる家族』のファンなら思ったでしょう。

てるてる家族』は昭和の名作詞家・なかにし礼が原作だからか、昭和歌謡とオールディーズの洋楽を散りばめたミュージカル仕立てが特徴。その中でも「ラブ・ミー・テンダー」は重要な曲で、ローリー(杉浦太陽)がよく歌い、最後のクライマックスでは和ちゃん(錦戸亮)がローリーから教わって、冬子(石原さとみ)に愛を告白するため翼をつけて吊りで歌い、ジャニーズか!ジャニーズだよ!と印象を残しました。

野島伸司脚本作品『人間・失格』でサイモン&ガーファンクル「冬の散歩道」、『未成年』「未成年」でカーペンターズ「青春の輝き」、『ストロベリー・オンザ・ショートケーキABBA「チキチータ」と洋楽をよく使うのでそれだけなら偶然かもしれません。

しかし『高嶺の花』は主演・石原さとみに加えて異母妹が『べっぴんさん』芳根京子に義母『ええにょぼ戸田菜穂と家族の女性がみんな朝ドラヒロイン。相手役の峯田和伸も『ひよっこ』の叔父役と朝ドラを意識したキャスティングです。

最近の民放ドラマは朝ドラのヒロインだけでなく脇役俳優も認知度が高いとされてよく使われる傾向にあります。この傾向が最も強いのがTBS系日曜劇場『この世界の片隅に』。19人の主要登場人物中、朝ドラヒロイン経験者2人(榮倉奈々尾野真千子)。『あまちゃん』以降の朝ドラ出演12人,出演してない5人です。逆に朝ドラ出てないのに父親役に抜擢のドロンズ石本、よほどスタッフが使いたかったんだなと思ってしまいます。

そんなこんなを考えると「この歌好き」といったのは、そんなにみんな朝ドラ好きなんだったら、と折り込んできたのではないかと予想します。

 

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近ごろ気になる太田緑ロランス

まずは4月8日の『怪盗戦隊ルパンレンジャーvs警察戦隊パトレンジャー』でフランス人宝飾デザイナー役で登場。フランス語をしゃべり日本語もナタリー・エモンズ(トリバゴ姉さん)よりうまい女優さんは誰?と調べました。舞台で活躍していて、NODA・MAPで十八代目中村勘九郎野田秀樹と三人芝居した実績があるのか。

太田 緑 ロランス - ALPHA AGENCY|アルファエージェンシー

 

natalie.mu

 

続いて『半分、青い。』で裕子(清野菜名)「5分待って」の担当編集として登場。ただし裕子全盛期があっという間に終わってしまったので見せ場はなし。

そして『限界団地』で謎の老婆・東加代子(江波杏子)の若い頃として登場。6月30日放送の第4話は老婆の謎が明かされる回。サイコサスペンスの『限界団地』ですが、江波杏子の若い頃が太田緑ロランスというのは絵的にすごくホラーでした。

 

このちょい役だけど立て続けに目立つのは出たての吉田羊を思い出します。
吉田羊が売れ始めたのは2008年の朝ドラ『瞳』に出演したのがキッカケ。これを中井貴一が見て気に入って自分の主演ドラマ『風のガーデン』に出てもらう。さらに中井貴一三谷幸喜に紹介して2009年の東京サンシャインボーイズの復活公演に出演。ここからドラマ出演が増えてきます。
個人的に名前を覚えたのは向井理主演の『傍聴マニア09裁判長!ここは懲役4年でどうすか〜』の準レギュラーから。「地裁のクールビューティー」と呼ばれるやり手美人検事役で「そういえば、この人、よく見るな」と気づきました。その後、2012年の朝ドラ『純と愛』で感情を出さないホテルマンでブレイク、2014年の『HERO』で再び検事役で大ブレイクし現在に至ります。

 

太田緑ロランス、出演量は昔の吉田羊には及ばないもののブレイクしそう。ハーフ顔なので最初は役柄が限られるでしょうが、視聴者が慣れれば問題ない。『純と愛』の日比ハーフでヒロインの兄嫁役がドラマデビューの高橋メアリージュンも当時はおなじ悩みがあったそうだけど、いまや普通の役をやってます。
ベッキーも『くノ一忍法帖』で時代劇主演してるし。

『カーネーション』夕方に再放送

NHKBSプレミアム。朝ドラと大河の再放送枠、4月からのラインナップが公開されました。
月〜土7:15からの朝ドラ再放送は2014年秋から放送された『マッサン』。現在は2014年春からの『花子とアン』なので本放送順通り。
日曜12時からの大河ドラマ再放送は『軍師官兵衛』。今の朝ドラ再放送『花子とアン』は中園ミホ脚本と鈴木亮平がらみで『西郷どん』の前フリ的なところがあったので、同じパターンで10月からの朝ドラ『まんぷく』脚本の福田靖つながりの『龍馬伝』かと予想していましたが。つながりといえば高橋一生つながり要素はあります。昨年の大河本放送
『おんな城主直虎』でブレイクした高橋一生、現在再放送中の『風林火山』そして『軍師官兵衛』にも出演しています。それで放送されるんではないとは思いますが。

いつもならそれだけなのですが、4月からはもう一つありました。NHK総合 月〜金16:20〜16:50に『カーネーション』の再放送。放送枠的に『ごごナマ』と『シブ5時』の間。今のままでは『ごごナマ』からなんとなく『シブ5時』になってしまうので、新しい視聴者をひきつけて『シブ5時』に行きたいという編成でしょうか。

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『てるてる家族』が冬季五輪に与えた影響

平昌オリンピックも終盤ですが、フィギュアスケート女子日本代表の二人が『てるてる家族』つながりがあることに気が付きました。

坂本花織は『てるてる家族』の長女・春子(紺野まひる)がフィギュアをするのにあこがれて。そのまんまでドラマを見たのがフィギュアを始めたきっかけ。
宮原知子は春子のモデル、グルノーブル五輪出場の岡本(旧姓・石田)治子がコーチの一人です。
てるてる家族』は2003〜2004年放送なので、1998年長野五輪荒川静香金メダルの2006年トリノ五輪の間。狭間の時期の人気を埋めたんですね。

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てるてる家族』はなかにし礼てるてる坊主の照子さん」が原作。ヒロインは四女・冬子(石原さとみ)ですが、原作タイトルは母・照子だし、母と四姉妹が主役のような朝ドラでした。
長女が石田治子で次女がいしだあゆみ。原作の宣伝文句が記憶なので正確ではないですが「同じ年に五輪選手と紅白歌手を生んだ家族の奇跡」というようなものでした。
四女は宝塚音楽学校小柳ルミ子と同期、歌劇団は辞退して石田ゆりとして歌手デビュー。あまり売れずに全シングルの作詞を手掛けたなかにし礼と結婚。ドラマでは歌劇団を辞退するまでは一緒ですが、その後、実家のパン屋に。
三女だけ普通の人ですが、ドラマでは日清食品安藤百福がモデルのインスタントラーメン発明者を手伝うリケジョに。

この時の安藤百福がモデルの夫妻を演じたのが中村梅雀堀ちえみ。2018年度秋からの朝ドラ『まんぷく』は安藤夫妻がモデルで、安藤サクラ長谷川博己が演じます。
以前の朝ドラのサブキャラのモデルが新作の主役のモデルになるのは、『心はいつもラムネ色』と『わろてんか』の吉本せいに続くものです。

芦屋といってもいろいろ

谷崎潤一郎原作の『平成細雪』。大阪の商家の没落過程を、戦前からバブル崩壊以降の平成に移し替えています。『東京タワー』などの源孝志の演出、BSプレミアムでドラマや『京都人の密かな愉しみ』もつくっているので、その路線でしょうか。

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全体に悪くはないけど、長女・鶴子が中山美穂というキャスティングがやや不満。現時点で多くの人のイメージは鈴木京香でしょう。ただ、2017年秋の収録だと『わろてんか』の姑役と重なるのかどうなのか。斉藤由貴もいいけど、現時点では使いにくい。
中山美穂と同じブランクの長かった昔の人気女優路線で山口智子なんてどうでしょうかね。実家が廃業した老舗旅館というイメージを背負って。

分家が芦屋にあり四女・妙子(中村ゆり)の工房が西宮の夙川に。個人的にあの辺りは土地勘があるので、風景を見るだけで十分に楽しめます。

芦屋といえば金持ちというイメージですが、田園調布や麻布とかは街なのに対して芦屋は人口10万弱の市。本当に金持ちなのは六麓荘など町名を限定しないといけません。ちなみに貴乃花部屋の新三役・貴景勝は芦屋出身です。

六麓荘で有名なのは金持ち条例とか豪邸条例とか呼ばれる建築条例。敷地面積400平米以上でなければ建てられません。
こういう条例がないとどうなるかというのを描いたのが湊かなえ原作、鈴木京香主演の『夜行観覧車』。高級住宅地に元お屋敷の土地を分割して安くしたところに引っ越した家族がとんでもない目にあうのが描かれました。豪邸条例、必要です。

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そしてもう一つ芦屋を舞台にしたドラマがありました。BSジャパン『最後の晩ごはん』。芸能界を追われた主人公(中村優一)が故郷に帰って「ばんめし屋」を手伝うことなり、そこに集まる幽霊を成仏させる料理を探すというもの。
帰ってくるのが阪神芦屋駅でばんめし屋はその北、税務署やカトリック芦屋教会のあたりにある設定。あのあたりも山手の芦屋とは違ったいいところです。

なぜ芦屋なのかと思ったら原作者の椹野道流が芦屋在住の法医学者でした。

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